音楽体験は「没入型」から「ながら聴き型」へ?

ambie earcuffsがワイヤレスに。「wireless earcuffs」が発売されました(¥12,000+税)。

 

有線のみでスタートしたambieがわずか1年でそのワイヤレスバージョンを発売するまでに成長したとのことで、そのヒットのヒミツを探りに発売前日に行われた製品発表会に伺いました。

 

「それがあることで生活がちょっと楽しくなるファッションを常日頃考えて活動している」という株式会社ビームスの児玉正晃さんは、ambieの遊び心と未だかつてない取り組みであるところに注目したとのこと。

 

「いまはシェアオフィスのように、いろいろな人との関わり合いが重視されています」。ambieはコミュニケーションツールでもあるし、もともとラジオ文化を持っている人の”ながら聞き”の再来にも似ているといいます。

 

そして、雪山を登ったときにambieを装着したエピソードを披露。「無音を楽しむ、外を感じながらというのはすごく快適で、人の自然な感覚に沿うのだろう」と語り、イヤホン以外のambieの今後を目撃したいとエールを送っていました。

 

また、株式会社CINRAの柏井万作さんは、「Apple MusicやSpotifyといったストリーミングが主流となり、選り好みしなくても何でも聞ける昨今。新譜漁りよりもテーマ性をもったプレイリストがもてはやされるようになった。それに伴い、トーク番組や落語といったコンテンツをもつPodcastも見直され、オーディオ機器も、単に音楽を聴く以外の使い方が増えてきた」といいます。

 

確かにモノよりコトとはよく言われますが、何かをやりながらという文化は、ambieの企画意図に沿うものです。

 

しかも昨今は、興味の沸いた事柄から調べ、好きなモノをつまみ食いして進む「まぜこぜ文化」だと柏井さんは指摘。かつてのように、”先ず入門者はここから”とのお作法通りには学習しないというのです。そして、時代とファッションのステレオタイプな紐付けも影を潜め、混在している状態だが、「それこそがその人の個性になっている」と断じています。

 

思うに、気に入ったオーディオ機器を持つことでなりたい自分になるというのは、昔も今も変わらないでしょう。ただ、自分の個性を外にも常に開いているという状態にいることこそが、今流の自己主張のスタイルなのかもしれません。

 

となってくると、音楽は人一人が聴くものというよりは、人々が共有する空間を演出するものに昇華されていきます。ネット上の交流とは違い、生身の人間同士がひとところに集まって顔を合わせ、聴き、語る・・・ステレオだけでなくイヤホンまでも含めたオーディオの世界が、そんな時代に寄り添う存在になってきたことが垣間見えた発表会でした。