日本のジャズシーンを世界に見せつける!エイトアイランズのショーケースフェス第1弾

JAZZ BEYOND TOKYO PROJECT「JAZZ BEYOND TOKYO Vol.1」

JAZZ BEYOND TOKYO PROJECT(エイトアイランズ株式会社)主催のジャズ・フェス「JAZZ BEYOND TOKYO Vol.1」が、2022年9月3日に東京・渋谷のライヴスペースWWW X(ダブリュダブリュダブリュー エックス)で開催されました。

 

プロデューサーの八島敦子さん(=下の写真右。チック・コリア=中央とともに)は、かつてNHKエンタテインメントで「TOKYO JAZZ」を日本発の世界的なジャズフェスにまで成長させた立役者。

 

「海外の新たな才能を発見するために私がいつも頼りにしてきたのが、各国でおこなわれているショーケース方式のフェスティバルです。そこはいつも新しい発見や出会い、旬な情報に満ち溢れている場所」と明かします。

 

その一方で、海外の音楽関係者やフェスプロデューサーの友人たちから、日本のジャズシーンからも旬な才能を紹介してほしいという熱い要望を受け続けてきたともいいます。

 

いつか日本の素晴らしい才能を海外に発信するショーケースをつくれたら──その記念すべき第一回目が、このショーケースフェスなのです。

 

そのため今回のショーケースは、会場でのリアルイベントのほか、オンライン配信や映像などで、日本さらには海外のフェスプロデューサーなど音楽関係者の目や耳にもとまるような工夫がされています。

「不思議な世界をお楽しみになさってください」

今回の開催には、日本のジャズシーンの「いまとこれから」を駆けるアーティストが賛同して集結。

 

「小さなスタートですが、世界に注目されるようなショーケースフェスにコツコツと⻑期的に育てていく所存です」と八島さんは抱負を語っていました。

 

かくして、丸椅子とスタンディングの会場は気づけば超満員。往年のジャズ愛好家と思しき男性のほか、若者が多いのが印象的でした。

 

トップバッターは、いまもっとも注目を集めるジャズピアニスト桑原あいのソロ。モントルージャズや東京JAZZなどのライヴや、今回のセットリストにも含まれていたテレビ東京系「サタデーステーション」「サンデーステーション」のオープニングテーマや、スティーヴ・ガッドとウィル・リーとのトリオアルバム、最近では2021年4月にソロアルバム「Opera」をリリースしています。今回のライヴでは、スランプに陥ったときモントルーで励ましてくれたクインシー・ジョーンズの背中を思い出しながら帰途の飛行機で書いた曲なども披露されました。

 

2組目は、Shota Watanabe × Marty Holoubek。渡辺のりおを父に持ち2枚のリーダーアルバムとアーティストサポートも含むライヴを通じてマルチキーボード奏者としてさまざまなシーンで活躍する渡辺翔太と、オーストラリア出身で日本人アーティストとコラボする中で2018年に日本に移住し名だたる日本人アーティストとのコラボやNHK『ムジカピッコリーノ』レギュラー出演など、多彩な活躍を見せるマーティ・ホロベックによる、ウォーミーでアコースティックなデュオが披露されました。マーティをいじる渡辺のMCも愉快。

そして3組目は、松丸契 blank manifesto featuring ジム・オルーク、石橋英子、山本達久、波多野敦子、マーティ・ホロベック。1995年生まれの松丸はパプアニューギニアの山奥育ちで高校卒業まで楽器をほぼ独学で習得、バークリー音楽大学に全額奨学金で入学、首席で卒業というまさにこれからの日本JAZZ界が誇る逸材。そこに、映像作家と多数のコラボを持つジム・オルーク、映画『ドライブ・マイ・カー』のサントラを担当したピアノ、シンセ、フルート、マリンバ、ドラムなど多才な演奏もこなす石橋英子、アルバム「ashioto」が2020年の英国MOJO誌でベスト・アンダーグラウンド・レコード1位を獲得したドラマー山本達久、『ドライブ・マイ・カー』や自身の弦楽プロジェクトなどエフェクターも駆使した弦楽で名を馳せる波多野敦子、さらに2組目でも出演したマーティが参加。

 

「不思議な世界をお楽しみになさってください」という八島敦子さんの言はこのことだったかと、目と耳が釘付けになる演奏。一体どこから放たれているのか在処を探してしまう冒頭は、シンバルをこする音にエフェクトをかけた、アコースティックを超える景色が見える世界観。そこからあたかも映画のように進行していくドラマティックな展開に、観客は息を呑んで見守ることになりました。一体、なにを見せられているのか?聴いたと言うより目撃したと言いたい、不思議なビジュアル感覚があとにのこった30分ほどの1曲。これはもう一度聴きたい!

 

松丸はMCは苦手と照れながら「この曲は今回が最初で最後かも」と告白、貴重な体験を目の当たりにした一夜でした。

 

Vol.2には共感してくれる友だちとともにぜひ足を運びたいと思わせる衝撃的な体験でした。

 

(取材・写真・文:遠藤)