まさに命がけで撮った!メキシコ誘拐ビジネス描く『母の聖戦』テオドラ・アナ・ミハイ監督インタビュー

メキシコ誘拐ビジネスの実態に戦慄『母の聖戦』1月20日ロードショー

メキシコ誘拐ビジネスの実態を背景に、子どもを誘拐犯から取り戻す母親の愛と執念を描く『母の聖戦』が、1月20日(金)にいよいよロードショー公開。このたび、テオドラ・アナ・ミハイ監督のオフィシャルインタビューが公開されました。

本作品は、ルーマニア生まれでベルギーを拠点に活動するミハイ監督の劇映画デビュー作。

 

ルーマニア生まれのミハイ監督がメキシコの誘拐ビジネスを題材にしたきっかけは、16歳の時にサンフランシスコに留学した際に遡ります。

 

メキシコをルーツに持つ友人がたくさんできて、親しみを持ったメキシコを久しぶりに尋ねた際、麻薬戦争の勃発により街の様子が一変、市民の日常が危険に晒されていたことに衝撃を受けたといいます。

 

さらに主人公のモデルとなったミリアム・ロドリゲスという一人の女性との出会いが映画化を決定づけました。

 

「彼女が私に最初に言ったことのひとつが『毎朝起きるたびに、拳銃で自殺するか、人を撃ちたい』というものだった。この人は主婦なのよ。この人がこんな風に話すには一体どんなことを経験したの?このことが私に、『母の聖戦』の物語を伝えなくてはと決心させた。そして、この環境に生きる子どもではなく、自身の子どもを探す母親の視点でこの物語を語るべきだと気がついた」

 

さらに、母親目線で描く理由については次のようにコメントしています。

 

「母親の原始的な強さがあって、ライオンの雌のように、子どもを守るためには何でもやるの。これはとても普遍的なもの。なぜならどんな文化的背景を持つ人でもこれを理解するし、自分自身が親でなくても自分は誰かの子どもだから。女性の主人公がこれを表現できると思っていた」

 

また、ドキュメンタリーでなくフィクションにしたことについては、次のように説明します。

 

「この物語とセンシティブな情報の特性上、観察する形式のドキュメンタリーを撮るのは極めて難しかった。フィクションにすることで、私たちが言いたいことを正確に言う自由が得られると考えた」

 

安全面に配慮しつつ説得力のある作品をつくるためだったというわけですが、実際の撮影にあたり「必要最小限の人にだけ知らせて撮影をしていた。自分の国じゃない国へ行って映画を撮るのはとてもストレスのかかること。パンデミックの間は特にね。だけど私は挑戦することが好きで、そうすることで自分の一番良いところがひきだされた。この物語を人々に伝えなければと感じて、自分のエネルギーすべてを捧げた」と、逆境を力に変えて決死の覚悟で挑んだと明かします。

 

カンヌの「ある視点」部門でプレミア上映されたことについて次のように喜びを語っています。

 

「素晴らしく光栄なこと。すべての映画監督がこの美しい舞台を夢見ている。(カンヌで上映されるということは)この映画は旅をして、人に観られて、話題になるということだから。物語を語るとき私たちが望むことは、それが共有されることなの。特にパンデミックの中で映画を製作した後にその作品をカンヌの観客と共有することは、より特別に感じる」

軍と協力。そこで目の当たりにした、犯罪組織の実態

テオドラ・アナ・ ミハイ監督の劇映画デビューとなった本作は、現代ヨーロッパを代表する名匠のダルデンヌ兄弟、『4ヶ月、3週と2日』でカンヌ映画祭パルムドールに輝いたクリスティアン・ムンジウ、『或る終焉』で知られるメキシコの俊英ミシェル・フランコがプロデューサーとして参加しています。

 

メキシコ北部の町で暮らすシングルマザー、シエロのひとり娘である十代の少女ラウラが犯罪組織に誘拐。要求に従い20万ペソの身代金を支払っても、ラウラは帰ってこない。警察に相談しても相手にしてもらえないシエロは、自力で娘を取り戻すことを胸に誓い、犯罪組織の調査に乗り出します。

 

その最中、軍のパトロール部隊を率いるラマルケ中尉と協力関係を結び、組織に関する情報を提供したシエロは、誘拐ビジネスの闇の血生臭い実態を目の当たりにします。人生観が一変するほどのおぞましい経験に打ち震えながらも、行方知れずの最愛の娘を捜し続けるシエロは、いかなる真実をたぐり寄せるのでしょうか......?

 

『母の聖戦』は、2023年1月20日(金) よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて全国ロードショー。

[作品情報]

『母の聖戦』

監督:テオドラ・アナ・ミハイ 

製作:ハンス・エヴァラエル 

共同製作:ダルデンヌ兄弟、クリスティアン・ムンジウ、ミシェル・フランコ 

出演:アルセリア・ラミレス、アルバロ・ゲレロ、アジェレン・ムソ、ホルヘ・A・ヒメネス

2021年/ベルギー・ルーマニア・メキシコ合作/135 分/カラー/スペイン語/5.1ch デジタル/ビスタサイズ

字幕翻訳:渡部美貴 映倫 G 

配給:ハーク 

配給協力:FLICKK 

宣伝:ポイント・セット 

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