込めたのは、素材や職人へのリスペクト──アップサイクル小物COSONCO QS(コソンコクス)

もっとワクワクする、アップサイクルと呼べるモノ

北海道・旭川の木製家具メーカー・カンディハウスと、北海道・砂川の馬具・皮革製品メーカー・ソメスサドルのタッグが生んだ新ブランド「COSONCO QS(コソンコクス)」。2022年10月21日の発売予定に先立ち、プレス向けお披露目が行われました。

 

製造過程でどうしても出てしまう端材。端材と呼ぶには上質なカンディハウスの木材と、ソメスサドルの革材をなんとか有効活用できないか──そんな相談がデザイナーの倉本仁さんに寄せられたのは、1年半以上も前のこと。ディスカッションから始め、当初は、どちらのショップにも置けるインテリア小物を想定していたんだそうです。

 

「でも、なんかワクワクしない、というか。着地点が見える感じがして。せっかくなら、材をさらに高められる、まさに“アップサイクル”したいと思ったんです」

 

倉本さんが考えたのは、“TOY”に機能を加えたもの。北海道の動物たちだったり、スティックやラケットのような玩具にアートを掛け合わせたオブジェクトの数々でした。

 

「わかりやすいインテリアグッズではないものにしたかったんです。議論は『ブランドとは何か』というところまで遡りました。これまでいろいろな家具を手掛けてきた中で求められてきたのは、“機能と立体のバランス”でした。でも今回伝えたいのは、“豊かな価値”です。たとえばクルマであれば、単なる移動の手段としてではなく、スーパーカーのように素材へのリスペクトだったり、職人芸に裏打ちされた世界に導いていきたいのです」

その想いは、木と革という異素材の融合だけでなく、2社の職人のケミストリーをも生み出しました。「ほんとうにこんなことができるの?」から「ほんとうにこんなことをやっていいの?」まで、素材と格闘しつつ練り上げられていく一品一品の手仕事のコラボレーションが、この世にひとつしかない作品を生んだのです。

Townは、ビルや工場などひとつひとつが組み木細工のように繊細。機能としてはブックエンドだが、「こんな接着ができるのか」といった木工と革職人の腕の見せ所が魅力のアートオブジェだ
この「Town」シリーズは、ビルや工場などひとつひとつが組み木細工のように繊細。機能としてはブックエンドにも使えるのだが、「こんな接着ができるのか」といった木工と革職人の腕の見せ所が魅力のアートオブジェだ

文化はゆっくり伝わるべきもの

コンセプトははじめからそんな揺るぎないものでしたが、もっとも頭を悩ませたのはネーミングだったようです。

 

「コソンコクスとは、アイヌ語で『遠く離れた土地とのコミュニケーション』を意味します」と、ブランドの由来を説明してくれたのは、アートディレクターの谷内晴彦さん(desegno ltd.)。

 

重視したのは、どこの国の何なのかわからない、未知なるモノを印象づけること。そして、語感だそう。ヨーロッパかどこかの言葉かと思いきや、日本語だったとは畏れ入りました。

 

キーワードは「カルチベート」。裏コンセプトとして、旭川と砂川をつなぐ石狩川のように、「カルチャーはもっとゆっくり伝わるべきもの」という思想もあるのだそうです。

“アートオブジェ”全26種を予定

発表会場では、無造作に積み重ねたかのようなブロックの木の端材の上にコンセプト映像が映し出され、ジャングルの葉のように端革が吊られていました。

 

その奥には、下の写真のキタキツネ(82,500円・税込、参考価格)のほか、エゾヒグマ、エゾユキウサギ、エゾリス、エゾフクロウ、エゾオオカミといった北海道縁の動物たちなど、たくさんの作品が息を潜めるように佇んでいました。

 

発売時には全26種類がラインナップされる予定とのこと。

 

「COSONCO QS(コソンコクス)」の作品は、2022年10月21日に発売予定です。

 

(取材・写真・文:fy7d遠藤)