なぜ日本のひとりの天才技術者は、権力に潰されなければならなかったのか?

映画『Winny』の2023年3月公開決定!ティザービジュアルも

2002年に金子勇が開発・公開したファイル共有ソフト「Winny」をめぐるネット史上最大の事件を描く映画『Winny』の2023年3月公開が、ティザービジュアルとともに発表されました。

©2023 映画「Winny」製作委員会
©2023 映画「Winny」製作委員会

ティザービジュアルには、主人公・金子勇が暗闇の中、パソコンに向き合う後ろ姿が映し出されています。この小さな部屋、小さな画面からネット世界の構図を日本から変えられたかもしれない──そんな当時の様子を想起させるビジュアルとなっています。そして物語は、世界を揺るがすネット史上最大の事件に発展していきます。

 

映画『Winny』はもともと、2018年に起業家・古橋智史が企画し、「ホリエモン万博」の「CAMPFIRE 映画祭」でグランプリに輝いた作品。このたびの公開に向けて、キャスト及び脚本、監督など企画の方向性を一新し、2021年に撮影、既に完成し来年2023年3月の公開を待つばかりとなっています。

当時大問題となった「Winny」事件の真相

Winnyとは、金子勇(ハンドルネーム47)が開発したファイル共有ソフトで、インターネット上でつながった複数のパソコンでファイルを共有する分散ファイルシステムの技術を使用したもの。金子が電子掲示板サイト「2ちゃんねる」上で「Winny」を公開すると瞬く間にユーザーは増え、ピーク時は200万以上の人が使用していたと言われています。

 

当時ではあまり利用されていなかったP2P技術を発展させ、データをバケツリレー方式で転送するため、匿名性が非常に高いのが特徴。そのため、映画やゲーム、音楽などの著作物データが許可なく流通し、著作権侵害の温床と指摘されて問題に。

 

加えて、その特性を悪用したウイルスも流行。感染すると意図しないデータが流出してしまい、警察や自衛隊の内部資料、企業の顧客情報や個人所有のプライベートファイルなどが漏えいし、回収不能に。当時の安倍官房⻑官は会見を開き「情報漏洩を防ぐ最も確実な対策は、パソコンでWinnyを使わないことです」と呼びかける事態となりました。

 

次々に違法コピーした者たちが逮捕されていく中、開発者の金子も著作権法違反幇助の容疑で2004年に逮捕。サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光は、「開発者が逮捕されたら弁護します」と話していた矢先、金子の逮捕報道を受け、急遽弁護を引き受けることになり弁護団を結成。金子と共に裁判で警察の逮捕の不当性を主張するも、第一審では有罪判決を下されてしまいます。しかし運命の糸が交差し、世界をも揺るがす事件へと発展し…。

 

なぜ、一人の天才開発者が日本の国家組織に潰されてしまったのか?本作は、開発者の未来と権利を守るために、権力やメディアと戦った男たちの真実を基にした物語です。

「埋もれてしまった天才を後世に残すのが映画の役目」

本作の発表にあたり、W主演の東出昌大及び三浦貴大、松本優作監督、企画の古橋よりコメントが到着しました。

 

兼子を演じた東出は、役作りに向けて18キロ減量したといい、次のように明かしました。

 

「無謀にも金子勇さんになろうと役作りの準備をするにあたり、壇先生やご家族の皆様、多くの弁護士の先生方に多大なる御協力を頂きました。改めて御礼申し上げます。金子勇の生きた証を、劇場でご覧頂けましたら幸いです」

 

兼子を弁護する壇を演じた三浦は、役作りを次のように語っています。

 

「実際の出来事を物語として演じると言うのは大変難しいことです。壇さんの思いを大切にしながら、ある意味、役者として客観性を保つことも大切にし、法廷のシーンなどは壇さんにお話を聞きつつできる限りリアルなものにしていきました」

 

松本監督は金子の考えに共鳴し、絶対映画にしたいとメガホンを取りました。

 

「映画という文化は、ある時代の中で、埋もれてしまった場所に光を当てることだと思います。未だ世間にさらされていない金子勇という天才技術者と、彼を支え、共に戦った壇さん始め弁護団の皆様が生きた時間に、私は光を当てたい。この映画が、わたしたち人間が、より自由に、平等に生きてゆくための試金石となることを願って」

 

企画者である古橋は、企画当時から5年を経た今も「残念ながら、まだ日本がテクノロジーで席巻するまでには至っていません」とコメントを寄せました。

 

「本作の製作をしていく上で、金子勇さんや裁判をサポートした人達の生き様を少しでも世の中に残したいという思いが強くなった」

 

映画『Winny』は2023年3月に全国公開されます。

[作品情報]

映画『Winny』

企画: 古橋智史 and pictures

原案: 朝日新聞 2020年3月8日記事 記者:渡辺淳基 

プロデューサー:伊藤主税、藤井宏二、金山

監督・脚本:松本優作

撮影監督・脚本:岸建太朗 

制作プロダクション:Libertas/制作協力:and pictures 

出演:東出昌大、三浦貴大

配給:KDDI/ナカチカ 

©2023 映画「Winny」製作委員会 

公式 HP:winny-movie.com

Instagram:winny_movie Twitter: @winny_movie