芦沢啓治ディレクション、リビタの高級リノベマンション『オパス有栖川』にみる真の“豊かさ”

高級リノベーションマンション『オパス有栖川』内覧会

高級リノベーションマンション『オパス有栖川』(東京・南麻布)内に、建築家・芦沢啓治によるトータルディレクションのフラッグシップモデルが竣工。内覧会が行われ、そこで取材した内容を紹介します。

豊かさの基準は、“豪華”“華美”ではなく“自分らしさ”“心の豊かさ”

この物件は、リノベーションを手掛けるリビタが都心住宅の本質的な価値を追求する住宅ブランドとして2013年に立ち上げた「R100 tokyo+」の一環。都心で1億以上のマンションを探すにも新築では平均40.3㎡という中、リノベーションなら100㎡超の豊かな暮らしを実現できるというコンセプトを掲げています。

 

販売実績は年間30戸で、本物件を取得したご家族のように、30代後半をピークに比較的若い夫婦と子どもひとりという3人暮らしが多いとのこと。現在なおそのような物件を5600もの人が探しているのだそうです。

 

そんなオーナーの特徴は、かつての富裕層が持つ「豪華、華美」といった“飾る”イメージとは異なり、自分一代で資産を築き上げたNew Luxuryであり、「自分たちらしい心地よさ」という“心の豊かさ”を求める傾向にあるといいます。

 

これをリビタでは「QOL(Quddity of Life)」つまり「本質的な価値が表現がされる暮らし」と定義し、住む人が豊かさを感じるようにひとつひとつ丁寧に手作りで誂え、光や景色をコントロールできる空間作りを目指しています。これには造って売って終わりではなく、入居後の体験も含みます。

キーワードは“アート”“カスタム”ないし“手仕事”

そうした目的は、この空間に合わせた特注家具のみならす、住まいのポイントに配置されたアートからもうかがえます。

資材工場も自前で管理、100%国内生産にこだわるカリモク家具と提携。天然木にはひとつとして同じものはないゆえ最終的には職人の手が入る木製家具を採用。

 

「Crafted Space」を標榜し全体のディレクションを担当した芦沢啓治が、自身も内装・家具デザインを担当しながら、クリエイティブディレクターとしてデンマークのNorm Archtectsを起用。当該空間に合わせた大型で分割可能な家具を誂えています(Karimoku Case Study)。

上海で発表した作品をリデザインしたラウンジチェア、玄関のスツールや照明と呼応し長いながらも幕板がなくリビングからもすっきり見えるダイニングテーブル、Rにすることで様々なシーンで組み合わせられるリビングテーブル…。

 

そこには、「すべてをひとりで賄おうとするとデザイナーの主張が出過ぎる」という配慮があります。椅子はNorm Architects(ノーム・アーキテクツ)、アートも2次元でなく立体にすることで木製家具と共鳴し始めます。中田由美のスタイリングも効いています。

「そこまでちゃんとやると住空間はこんなに美しくなるんです」(芦沢)

2023年モデルのプロトタイプであるRの効いたデザインのDynaudioスピーカーシステム、壁投写で超短焦点プロジェクターが置かれた幅広のAVボードにセンスを感じます。

取材したのは冬場の午前中ですが窓を開けていても暖かく感じるのは、斜めにカットされたリビング空間と面取りされた漆喰壁に映える窓から差し込んだ日の光影も無縁ではないでしょう。

 

(取材・写真・文:遠藤)