4者4様の演出手法に驚き!「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト 2022」初日舞台挨拶

文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト 2022」は、今年度の製作実地研修で完成した短編映画4作品を、2月23日(金)まで限定公開中。このたび、2月17日に角川シネマ有楽町で初日舞台挨拶が行われました。

 

 

上映されたのは、ワークショップから選出され製作実地研修に進んだ4人の若手監督、岡本昌也、成瀬都香、藤本楓、牧大我が、講師による脚本指導を経て、各制作プロダクション協力のもと、プロのスタッフ・キャストと共に撮影・編集した25分~30分の短編映画です。上映後に登壇した4人は、無事に劇場公開を迎えて感無量の様子。

 

 

1本目の『うつぶせのまま踊りたい』の岡本監督は、制作の動機を次のように語りました。

 

「今、28歳なんですけど、社会性を獲得していくにつれ、だんだんと子供 の頃の衝動や怒り、社会に対しての不満みたいなものが消えていっていることに気付いて、そういったもの を無かったことにしたくないなとおもって、自分の中の子供みたいなところを描きたくてこの脚本を書きました。その曖昧な人生の夕焼けみたいな時期を、詩という曖昧なものを表現する媒体で描けるのではないかと思った」

 

2本目『ラ・マヒ』の成瀬監督は、テーマ選びの楽しさと演出の難しさを痛感した様子。

 

「プロレスが題材の作品を撮ったのですが、プロレスを観たことのない人や、いろいろな職種の人にも観てもらって、明日もちょっと頑張ろうと思ってもらえる作品を目指してきました。私は2年前からプロレスが大好きで、“どんなにやられてもやり返す”という姿がプロレスの醍醐味なのですが、それを初めて見た時に、こんな人たちが世の中にいるのかと衝撃を受けて、帰りの電車でぼろぼろに泣きながら帰りました。この熱量と人間の凄みみたいなものをいつか描きたいとおもい、それがプロレスだったら映画にもできるのではないかとおもいました。役者が演じる役の生活を連想しやすいよう状況の説明をきちんとするように気を付けました。特に今回は、主人公が試合の前に髪を染めたのが、試合の1か月前だと誤って役者に伝えてしまい、その後、試合の3日前に染めたんだと訂正して伝えたら、俳優さんのお芝居が全然変わって、状況をちゃんと伝えるのは大事だなと実感しました」

 

3作目『サボテンと海底』の藤本監督は、驚きの演出方法を披露。

 

「私は普段は美術スタッフをしていて、美術スタッフとして入った現場で初めてスタンドインの仕事を見かけて、面白いなとおもってこの作品を作りました。ラストシーンはずっと悩んでいたのですが、最終的にndjcに一番最初に送った初稿のラストシーンになりました。(演出では)例え話はよくしました。何メートル走ってきたテンションとか、脚本をもらったときは恋をするように、恋人からのメールみたいにウキウキしてくださいとか。『恐竜に襲われる人』とか『なんちゃってで能をする』とか抽象的なト書きを何行か書いていて、あとは主演の宮田さんにお任せでアドリブで演じてもらいました」

 

 

4作目『デブリーズ』の牧監督も演出の裏話を披露。

 

「自主映画を制作していた時は5千円くらいの予算で作品を作っていたのですが、今回、自主映画とは比べ物にならないくらいのお金を使って作品を作れるということなので、せっかくならこれまで作れなかったような映画を撮ろうということで、それは何だろうと考えたときにSFだ!とおもって、美術や衣装もやりたくてこんなストーリーになりました。楽しそうにしてる、ニヤニヤしてるとは現場でよく言われます。俳優さんに顔をすごい見られている感じがあって、僕のニヤニヤをヒントに向こうも答えを手繰り寄せている感じがあって、そうやって感情を表に出すことは共有する一つの手段なのかなと今 はおもっています。本当にいい演技のときは『フッ』という、笑ってしまった音がきっと入ってしまっているとおもいます(笑)」

若手監督育成プロジェクト。修了者の長編劇場公開続く

「ndjc(New Directions in Japanese Cinema)」とは、次代を担う若手映画作家の発掘と育成を目的に特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO、理事長:松谷孝征)が文化庁から委託を受けて2006年度より運営する人材育成事業。

 

 優れた若手映画作家を公募し、本格的な映像制作技術と作家性を磨くために必要な知識や技術を継承するためのワークショップや製作実地研修を実施するとともに、作品発表の場も提供しています。

 

これまでにも修了者の長編劇場公開が続いており、吉野耕平監督作『ハケンアニメ!』(22)、藤澤浩和監督作『ツーアウトフルベース』(22)、三宅伸行監督作『世の中にたえて桜のなかりせば』(22)、板橋基之監督作『Bridal, my Song』(22)、真田幹也監督作『ミドリムシの姫』(22)のほか、今年も松永大司監督作『エゴイスト』(23)、草苅勲監督作『死体の人』(23)の公開が控えています。

 

 

[上映スケジュール]

<東京>

期間▶2月 17日(金)~23日(木・祝) 連日18:30~

場所▶角川シネマ有楽町

 

<名古屋>

期間▶3月10日(金)~16日(木) 連日18:00~

場所▶ミッドランドスクエア シネマ

舞台挨拶▶3月11日(土): 映画パーソナリティの松岡ひとみと、ndjc2022監督4名によるトークセッション。

 

<大阪>

期間▶3月17日(金)~23日(木) 連日18:00~

場所▶シネ・リーブル梅田

舞台挨拶▶3月18日(土):映画パーソナリティの津田なおみと、ndjc2022監督4名によるトークセッション。

 

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