6月12日(日本時間)、アメリカ演劇界で最も権威のあるアワードとして知られる「第76回トニー賞授賞式」が、『イン・ザ・ハイツ』の舞台となったニューヨーク市マンハッタン区ワシントンハイツのユナイテッド・パレスで初めて開催されました。
『キンバリー・アキンボ』が作品賞はじめ5冠
ミュージカル部門では、常人の数倍の早さで老いていく16歳女子高生を描いた『キンバリー・アキンボ』がミュージカル作品賞、ミュージカル主演女優賞(ヴィクトリア・クラーク)、ミュージカル助演女優賞(ボニー・ミリガン)など最多5冠を獲得。最多12部門13ノミネートの『お熱いのがお好き』は、ミュージカル主演男優賞(J・ハリソン・ジー)など4冠でそれに続きました。
写真:AP/アフロ
演劇部門ではトム・ストッパード作、ユダヤ人一族の四世代にわたる物語を描いた『レオポルトシュタット』が、演劇作品賞、演劇演出賞、演劇助演男優賞(ブランドン・ウラノヴィッツ)、衣装デザイン賞(ブリジット・ライフェンシュトゥール)の4冠。なおストッパードの作品が作品賞に輝くのは5度目で、85歳にて自らのもつ最多記録を更新し、壇上で喜びを語りました。
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演劇主演女優賞は、ドラマ『キリング・イヴ/Killing Eve』や映画『最後の決闘裁判』のジョディ・カマーが、ひとり舞台の『プライマ・フェ イシィ』でブロードウェイデビューにして見事受賞。法律と社会が抱える矛盾に直面する若き弁護士を演じ、オスカー女優のジェシカ・チャステインを退けました。
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ノンバイナリーの受賞に喝采
J・ハリソン・ジー(『お熱いのがお好き』)とアレックス・ニューウェル(『シャックト』)が、性自認を明言していないノンバイナリーを公言している俳優として初めてノミネートされていましたが、それぞれJ・ハリソン・ジーがミュージカル主演男優賞、アレックス・ニューウェルがミュージカル助演男優賞に輝きました。
写真:AP/アフロ
鮮やかな青いドレスで登壇したJ・ハリソン・ジーは、トロフィーを手に「“見られてはいけない”と言われてきたみなさん、これはあなたたちへの贈り物です」と、マイノリティのコミュニティに向けて呼びかけました。
アレックス・ニューウェルも「私は、ノンバイナリーの太ったマサチューセッツ出身の人間としてここにいます。『無理だ』と思うみなさんに目を見て伝えたいと思います。心を込めれば何でもできます!」と力強く呼びかけ、喝采を浴びていました。
異例の台本なしも圧巻のパフォーマンス
今年は全米脚本家組合(WGA)によるストライキを受け、ショーを支える脚本家への敬意を表する形で授賞式は台本なしという異例の形式で進行。
昨年に続き司会を務めたアリアナ・デボーズが、台本を開くと中身が白紙で呆然とするという演出に始まり、1930年代に建てられた絢爛豪華なユナイテッド・パレスを存分に使ったオープニング・パフォーマンスは音楽とダンスのみでセリフや歌詞は一切なし! それでもアリアナらが圧巻のパフォーマンスを見せ、会場はスタンディングオベーションで称えました
写真:AP/アフロ
功労賞は、『ニューヨーク・ニューヨーク』『キャバレー』『シカゴ』など数々の傑作で知られる作曲家ジョン・カンダー、『キャバレー』のMC役で舞台ではトニー賞、映画ではオスカーを受賞した俳優ジョエル・グレイが受賞。96歳と91歳のふたりが健在な姿を見せ、アリアナ・デボーズとジュリアン・ハフが『シカゴ』の“Hot Honey Rag”の華麗なパフォーマンスで祝福しました。
写真:AP/アフロ
台本がないことで今年はノミネート作品以外のパフォーマンスも多く、歌手ニール・ダイアモンドの伝記的ミュージカル『ビューティフル・ノイズ』から、大ヒットナンバー“Sweet Caroline”が披露され会場が一丸となり大合唱。リン=マニュエル・ミランダがノリノリで歌う姿も印象的でした。
リア・ミシェルは『ファニー・ガール』から“Don't Rain on My Parade”を熱唱。名古屋市出身の岩井麻純、ハワイ出身のキャンディス・ハタケヤマもパフォーマンスを行いました。
写真:AP/アフロ
日本のスタジオでも生歌披露
日本のスタジオでは昨年に続き井上芳雄、宮澤エマがナビゲーターを務め、スタジオゲストとして俳優の市村正親、平方元基、三浦宏規、影山雄成(演劇ジャーナリスト)、柏木しょうこ(映像翻訳者)が出演。
オープニングでは井上と宮澤がスタジオで「New York, New York」を生で熱唱、三浦はダンスパフォーマンスを披露。授賞式終了後のスタジオでは、平方がミュージカル『生きる』より、自身が演じる小説家の楽曲「人生の主人になれ」をスタジオで生歌唱しました。
『第76回トニー賞授賞式』[字幕版]は、WOWOWライブにて、6月17日(土)午後9:00より放送。
[主な部門受賞結果]
★演劇作品賞 『レオポルトシュタット』
★ミュージカル作品賞 『キンバリー・アキンボ』
★演劇リバイバル作品賞 『トップドッグ/アンダードッグ』
★ミュージカル・リバイバル作品賞 『パレード』
★演劇演出賞 パトリック・マーバー『レオポルトシュタット』
★ミュージカル演出賞 マイケル・アーデン『パレード』
★演劇主演男優賞 ショーン・ヘイズ 『グッドナイト、オスカー』
★演劇主演女優賞 ジョディ・カマー『プライマ・フェイシィ』
★演劇助演男優賞 ブランドン・ウラノヴィッツ『レオポルトシュタット』
★演劇助演女優賞 ミリアム・シルヴァーマン『ザ・サイン・イン・シドニー・ブルースティーンズ・ウィンドウ』
★ミュージカル主演男優賞 J・ハリソン・ジー『お熱いのがお好き』
★ミュージカル主演女優賞 ヴィクトリア・クラーク 『キンバリー・アキンボ』
★ミュージカル助演男優賞 アレックス・ニューウェル『シャックト』
★ミュージカル助演女優賞 ボニー・ミリガン『キンバリー・アキンボ』
★功労賞 ジョン・カンダー/ジョエル・グレイ
[放送予定]
■『第76回トニー賞授賞式』[字幕版]
6月17日(土)午後 9:00〜 [WOWOW ライブ] [WOWOW オンデマンド] 番組公式 URL:https://www.wowow.co.jp/stage/tony/
※「第76回トニー賞授賞式プレショー」を含む
※WOWOW スタジオパートは編集版として一部含む
■『第76回トニー賞授賞式』[同時通訳]
※スタジオパートも全て含む。
『第76回トニー賞授賞式プレショー』[同時通訳]
WOWOW オンデマンドにて配信中(6月17日(土)午後 8:59 まで)