自然と元気がもらえる…『古の王子と3つの花』
現代フランスを代表するアニメーション監督ミッシェル・オスロの最新作『古(いにしえ)の王子と3つの花』が、7月21日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開されます。このたび、著名人からの絶賛コメントと、オスロ監督のオフィシャルインタビューがとどきました。
吉村作治(エジプト考古学者)は、「今まで出会ったことのない素敵な雰囲気に感動しました。そして主人公たちに共通しているのは、彼らが“知恵者”ということ。知恵と勇気と優しい心で苦難を乗り越えるそんな珠玉の物語です」と解説。
小野正嗣(作家)は、「三つの物語がかくも美しくかくも抱擁的なのは、オスロ監督の魔法が誰の心のなかにもある懐かしい人間的な風景に、私たちを連れ戻してくれるからではないか」と分析。
サラーム海上(音楽評論家/中東料理研究家)は、「現代フランスの殺伐とした工事現場で一人のアフリカ系女性が語りだす。それは黄金煌めく古代エジプト、影に覆われた中世フランス、世界のあらゆる色彩があふれる近世オスマン帝国を舞台に、偶然と決断により運命を切り開く3人の王子の物語。大スクリーンで流れに身を任せれば時間も空間も超えられる!」と感想を述べます。
加藤隆(アニメーション作家) は、「見たこともないような、壮麗な物語世界を旅するような映画です。古代エジプトの壁画やヨーロッパの絵本、アラビアンナイトの挿絵が、色彩鮮やかに、流麗に動き出すようなアニメーションは、私たちに全く新しい感覚を呼び起こすでしょう」とコメント。
トリコロル・パリは、「オスロ監督が描く若い主人公たちの聡明さにはいつもハッとさせられます。憂き目にあっても決して腐らず、権力に屈することなく、知恵と勇気で困難を乗り越える...そんな彼らの自由でしなやかな姿に、自然と元気をもらえます」と語りました。
突然のパンデミック…「映画を見ている間だけでも楽しんでもらいたい」
異なるスタイルで描かれた3つの物語からなる本作について、オスロ監督は何を語るか。
古代エジプトを舞台にした第1話『ファラオ』では人物がエジプトのレリーフに見られる特殊な姿勢(胴体は正面を向いたまま、頭と足は横向き)を再現して描かれています。
制作のきっかけについてオスロ監督は次のように明かします。
「ルーヴル美術館の館長から、あるプロジェクトでコラボレーションをしないかと誘われ『二つの土地のファラオ:ナパタ王家の叙事詩』という特別展を準備していることを話してくれました。私は、小学1年生ときからエジプト文明に魅せられていたこともあり、シナプスに火がつきました」
作品のテーマについては次のように明かします。
「展覧会に関する資料をすべて取り寄せ、クシュ(スーダン北部)の王が、エジプト全土を征服する夢を見る『夢の碑文』の翻訳を読みました。クシュ人は決して残酷な民族ではなく、さらに許すという文化を持っています。この王朝の素晴らしい要素を強調しながら、彼の旅路を忠実に脚本にしました」
中世フランスを舞台にした第2話『美しき野生児』は、舞台となるオーベルニュの民話をアレンジして作られており、切り絵のような黒いシルエットで人物が描かれています。オスロ監督はこの手法を採った理由を次のように語ります。
「予算の関係でお金があまりかからないというのもありますが、その潔さやシンプルさを気に入っています。それに、物語の陰鬱な面や中世の雰囲気にも見事にマッチしました」
歴史に忠実に作られた1、2話と対照的に、自由に創作されたトルコを舞台にした第3話『バラの王女と揚げ菓子の王子』については、次のように明かします。
「民族学的な正確さよりも、視覚的に美しく楽しくカラフルで、笑えるものを作りたかった」
各話を繋ぐ存在としてストーリーテラーが登場し、3つの物語へと誘っていきますが、ストーリーテラーの背景が建築現場で、労働者たちを前に話し始めるというアイデアについては次のように背景を語りました。
「突然やってきたパンデミック、そして最初のロックダウンは、極端で人々を警戒させ国中が動けなくなり、誰もが待機するように生活するというものでした。ストーリーテラーの絵は、あの静寂と想像を絶する空虚に包まれた最初の週に私が描いたものです。青色の仕事着に身を包んだ女性です。なぜなら“戦争“が終われば、前よりもエネルギーが必要になり、誰もがまじめに仕事に取り組まないといけないからです。そして、その風景は明らかに『復興』の現場と言えます」
映画作りについては、次のように謙虚に考えを語りました。
「毎回、作品を作るときは、映画を見ている間だけでも楽しんでもらいたいと思いながら作ります。そして観終わった後に、考えたり、何か残るものがあるといいなと願っています。私の映画のヒーローたちは、不当な権力に反旗を翻しただけなのです。私は、人々に自由であること、有害なルールに屈服したり従ったりすることを拒否するよう勧めています。私は映画を作るとき、先入観を持たずにあちこちから情報を集めています。私は真実と誠実さを追求しています。今、子供のころに私の映画を見たという若い人たちに会い、感謝されることがあります。これはすごいことです。しかも、一緒に働くアニメーターのほとんどが、こう言ってくれます。『私たちはあなたの映画で育ったから、ここにいるんですよ』と。私はよく観客と出会う場所に出向くのですが、あらゆる年齢層の観客が私に話しかけてきます。自分の作品が長年にわたってどんなインスピレーションを与えてきたかを知ることは、映画監督にとってとてつもないことです。私は幸せ者です。恵まれていると思います」
古代・中世・18世紀…3つの時代、3つの国の王子の物語
本作は、異なる都市と時代のエキゾチックな王子たちが自分を信じることで自らの運命を変え幸福を手にする至福の映像美で巡る3つの都、3つの時代の物語。
クシュ王国の王子はナサルサとの結婚を認めてもらうため、エジプト遠征の旅に出て、神々に祈り祝福されながら戦わずして国々を降伏させ、上下エジプトを統一、最初の黒人ファラオとなり、無事ナサルサと結ばれます。
中世フランスの酷薄な城主に追いやられた王子は、地下牢の囚人を逃がした罪で森に追放されるも、数年後美しき野生児として城主に立ち向かい、お金持ちから富を盗み貧しい人々に分け与え囚人の娘と結ばれます。
モロッコ王宮を追われた王子はバラの王女の国へと逃げ込み、雇われたお店の揚げ菓子を通じて国から出た事がない王女と出合い、2人は秘密の部屋で密会、宮殿を抜け出して自分たちで生きていくことを決意します。
エジプトからフランス・オーヴェルニュ、そしてオスマン・トルコ帝国へ…。古代・中世・18世紀のうっとりするような至福の旅は、美しい歴史書の世界へと観客を誘います。
ルーヴル美術館とのコラボレーションで制作された、古代エジプト、クシュ王国の王子が上下エジプトを統一し、黒人初のファラオとなる物語 『ファラオ』。理不尽な城主である父に叛逆した中世フランスの王子の物語 『美しき野生児』。千夜一夜物語に想をとった、イスタンブールが舞台の豪華絢爛な美味しい物語『バラの王女と揚げ菓子の王子』。勇気と知恵を糧に、非暴力で自分の人生を逆転させていく3人の王子のエキゾチックな物語は、先の見えない不安を抱えて生きる現代人に勇気を与えてくれるでしょう。
『古の王子と3つの花』は7月21日(金)公開。
[作品情報]
『古の王子と3つの花』
原題:『Le Pharaon, le Sauvage et la Princesse』
監督・脚本:ミッシェル・オスロ (『ディリリとパリの時間旅行』『キリクと魔女』)
声の出演:オスカー・ルサージュクレール・ ドゥ・ラリュドゥカン(コメディー・フランセーズ) アイッサ・マイガ
2022 年/フランス・ベルギー映画/カラー/1.89:1/5.1ch/83 分
日本語字幕:橋本裕充
配給:チャイルド・フィルム
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
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