没後23年。長岡ワールドを今こそ振り返る
オーディオファイルの皆さん、夏休みいかがお過ごしでしょうか。夏休みの読み物として、さらには久々に自作などしてみようかという方にピッタリのムック本『名人直伝!長岡鉄男の「スピーカーユニットの上手な使い方」~エコーズに残されたクラフト入門編と長岡ワールドの今~』が発売されました。
いまはコンピューター解析に3Dプリンター等などデータでおもうようなスピーカー設計ができる由。でも、大卒男子がこぞって初任給で購入した80年代のスピーカー群は、ゴッキュッパ(59,800円)をコアゾーンに魅力的な製品が売れに売れ、誌上でも実に様々な流儀があって評論家たちが激論を交わしていました。
なかでも熱狂的なファンを擁していたのが、長岡鉄男のバックロードホーン。もっとも、わたし自身これまできちんと読んだことはなく、その音も、自作派の読者宅や、とあるホームシアターインストーラーのショールームでしか体験したことがありませんでした。
しかしこのたび、BearHorn(ベアホーン)のエンクロージャーキットの組み立てと試聴取材に編集としてお手伝いすることが出来、貴重な体験となりました。
また、できあがったムック本では、長岡ワールドをまとめて読み直すことによって、氏の立ち位置の一貫性や、直感的なセンスを理解することができました。
自作入門者にとって実践的な内容も
本の大半を占めるのは、1970年代から80年代後半までフォステクスの販促誌「エコーズ」に連載されていたスピーカークラフト入門の記事120ページ分。いまだに世界の有名ブランドにOEM提供するフォステクスが長岡とコラボしていた頃のその内容は、わたしが在職していたステレオサウンドや各メーカーの世界観とは真逆ですが、長岡流としての立場が一貫していているため共感できる点も多く、読み応え十分です。
もっとも、このムック本は、単なる復刻本ではありません。現在入手可能なフォステクスのユニットとエンクロージャーキットで新たに組み立て、実際に試聴するところまでフォローしており、「ちょっと自作でもやってみようかな」という人にとっても実践的な内容になっています。
わたしが担当したのは、岩井喬先生のキット製作記事。BearHorn(ベアホーン)のキットを組み立て、フォステクスの2種類のユニットFE108-SolとFE108SS-HPで聞き比べました。かなり広い音楽之友社の視聴質で聴くと、再生産されたFE108-Solの素直なサウンドと、現代的なFE108SS-HPのギラギラした鳴りっぷりはとても印象深いものでした。
関東には、晩年AV再生にも取り組まれていた長岡先生の視聴室「方舟」再訪問記事もあり、ホームシアターファンにとっても、示唆に富んだ内容となっています。
ステレオサウンド社の編集時代、高津修先生とスキャンスピークのユニットでセンター&LRスピーカーを自作したときは、板の切り出しから行ったので大変でしたが、キットだとこんなにカンタン綺麗にできるのかと驚きました。
ぜひお手にとっていただければ幸いです。
[詳細]
名人直伝!長岡鉄男の「スピーカーユニットの上手な使い方」
~エコーズに残されたクラフト入門編と長岡ワールドの今〰
形態:MOOK
体裁:B5判横組み左開き
全160ページ(内カラー16ページ)
定価:2200円
7月18日発売
https://www.ongakunotomo.co.jp/information/detail.php?id=3053