失われつつある“助産師”を描くドキュメンタリー映画『1%の風景』公開決定

『1%の風景』11月11日公開

助産所や自宅での出産をした4人の女性と、彼女たちをサポートする助産師の日々をみつめたドキュメンタリー映画『1%の風景』が、11月11日 (土)よりポレポレ東中野ほかで全国順次公開されます。このたび、吉田夕日監督と医師で東北芸術工科大学客員教授でもある稲葉俊郎、写真家でライフワークとして出産や狩猟に関わる撮影や原稿執筆に取り組む繁延あづさからコメントが届きました。

©2023 SUNSET FILMS

吉田監督は次のように本作品を撮ったいきさつを明かします。

 

「この映画は、病院で第一子を出産した私が、第二子を助産所で出産したことから始まりました。助産所での日々は、それまでの人生とは別の景色の中にいるようで、一日の時間の流れも、口に入れる食事の温かさも、耳にする音も、匂いも、何もかもが特別でした。また、いつでも頼れる助産師がそばにいてくれる安心感と心強さは、産後の不安や育児の悩みを抱える私たち家族に精神的、身体的な安定をもたらしてくれました。それまでほとんど知る機会のなかった"助産師"の世界をもっと知りたい。私は、生後6ヶ月の息子を背負いながら、カメラを手に助産所に通い始めました。撮影を続けて3年が過ぎた頃、新型コロナウイルスの流行が始まり、外出することさえ儘ならなくなった時も、助産師は妊婦の身体に触れ、会話をし、お産に向き合う姿勢が変わる事はありませんでした。目の前の妊婦一人一人に向き合い、命が生まれるまでを見届ける姿に、私は撮影をしながらずっと勇気づけられていました。この作品で描かれるのは、1%の選択をした4人の女性と助産師が過ごすささやかな日々です。そして小さな命がこの世に生まれるのを、信じて待つ時間です。世界がどんなに変わろうとも、女性が命を授かった時、寄り添う誰かがいてくれますように。そんな願いを込めて作ったドキュメンタリー映画です」

 

稲葉医師は次にように呼びかけます。

 

「どんな人も「いのち」が宿り「お産」を経由して、こうして存在している。そういう意味で、自分が「いのち」を 授かったことを改めて考え直すきっかけにもなるだろう。「日々のお仕事の中で、映画の中で語り得ないこともたくさんあるかと思います。いつも大変なお役目を引き受けいただきありがとうございます。」と映画を観た後に言葉が漏れ出てきた。この映画であなたは何を感じただろうか」

 

繁延は、次にようにコメントしました。

 

「産む人と、そばにいる人と、うまれてくる赤ちゃんと。笑い声、唸り声、泣き声が居合わせるこの風景が好きだ。今を超えていく、あたらしく生まれだす風景。私もここから始まった」

失われつつある“命の風景”

あまり知られていない助産所という場所。そこでは一人の助産師が、医療機関と連携し、妊娠、出産、産後と子育ての始まりまで、一貫して母子をサポートしています。健診のたびに顔を会わせ、お腹にふれ、何気ない会話を交わす。妊婦と助産師はささやかな時間を積み重ね、信頼関係を築き、命が生まれようとする“その時” をともに待ちます。

 

初めてのお産に挑む人、予定日を過ぎても生まれる気配のない人、自宅での出産を希望する人、コロナ禍に病院での立ち合い出産が叶わず転院してきた人。都内にある二つの助産所を舞台に4人の女性のお産を撮影したのは、本作が初監督作品となる吉田夕日。第一子を病院で、第二子を助産所で出産した経験から、助産師の仕事とその世界をもっと知りたいと本作の制作を決意しました。

 

この映画で描かれるのは助産所や自宅での自然分娩です。しかし、大切なのは分娩場所や方法を問わず、命を産み、育てようとする女性のそばに信頼できる誰かがいる、ということ。近年、さまざまな理由によりお産の取り扱いをやめる助産所が増えています。私たちが手放そうとしているものは何か?多様化する社会で、失われつつある“命の風景”をみつめた4年間の記録です。

 

9月に開催予定の「あいち国際女性映画祭 2023」で国内招待作品として上映されます。

 

『1%の風景』は、11月11日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次ロードショー。

 

 

[作品概要]

『1%の風景』

出演:渡辺 愛(つむぎ助産所)、神谷整子(みづき助産院)、菊田冨美子、飯窪 愛、山本宗子、平塚克子 

監督・撮影・編集:吉田夕日 

撮影:伊藤加菜子 

音楽:高田明枝 

マリンバ演奏:布谷史人 

サウンドエディター:井上久美子 

製作:SUNSET FILMS 

後援:公益社団法人日本助産師会 

配給 宣伝:リガード 

2023/日本/106 分/DCP/ドキュメンタリー

©2023 SUNSET FILMS