「あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―Exploring the World Beyond: The Ten Kings of Hell」
「あの世は、どんな世界なのだろう」──廃仏毀釈などで失われつつあった東洋の文化財保護のため岩崎彌之助が蒐集した仏教絵画を中心とした静嘉堂文庫美術館の所蔵品、中でも『仏教の美術』展(1999年)での初公開以来揃って展観する機会のなかった「十王図・二使者図」「地蔵 菩薩十王図」全13幅を一堂に展観する企画展が、9月24日まで公開中です。
人が現世を離れ、冥界に行くと、閻魔大王など10人の大王(地獄の十王)がいて、罪業を裁くと考えられています。そのため、亡くなった方の縁者が十王を供養することによって、その極楽往生を祈ってきました。
静嘉堂文庫美術館所蔵の「十王図・二使者図」(中国・元〜明時代)は、圧倒的なエネルギーに満ちた作品で、地獄に出向いて救済をする「地蔵菩薩十王図」(高麗時代) と一具で伝来してきた名品です。本展では、その全13幅を一堂に展観することで、往時の姿をしのびます。
あわせて、近年修復をおえた、日本、中国の仏教絵画などを修理後初公開するほか、江戸絵画の名品、円山応挙筆「江口君図」を、重要文化財「普賢菩薩像」重要文化財「西行物語」 と共に展示することで、「江口君図」の謎に迫ります。
3つのみどころ
ひとつめは、「十王図・二使者図」「地蔵菩薩十王図」全13幅を一堂に展観する初の試み。同一空間での展示は24年ぶり。圧巻の空間をぜひ体験してください。
ふたつめは、近年注目の高まるユニークな作品群です。女人成仏も描く「妙法蓮華経変相図」と子どもを守る「十二霊獣図巻」の全場面展示で、人々を救済する仏教美術の世界へ誘います。
みっつめは、円山応挙筆「江口君図」VS重要文化財「普賢菩薩像」。円山応挙筆「江口君図」は、応挙以前の肉筆浮世絵の美人画や、応挙以降の円山四条派の美人画のレパートリーの一つ。白象に乗る遊女を普賢菩
薩に見立てた、いわば普賢菩薩の見立絵(やつし絵)ですが、応挙のそれは鎌倉仏画の名品、重要文化財「普賢菩薩像」の品格に負けない、仏画のような美麗さと気品を備えています。両者を比較して、応挙の写実の謎に迫ります。
会場構成
第一章 極楽浄土への招待。
中国・南宋から元時代、朝鮮半島では高麗時代、 日本では鎌倉時代から南北朝時代という、13~14 世紀の東アジアにおける、釈迦如来、阿弥陀如来、そして観音菩薩らにより、極楽浄土を案内しています。
第二章 地獄の十王ここにあり。
大名家に伝来し、地蔵菩薩十王図と十王図二 使者図がセットとなった 13 世紀の名品です。地獄に 出向いて亡者を救済する地蔵菩薩と、裁きをする十 王、十王の足元にはそれぞれ細密かつエネルギーに 満ちた色彩と形で、裁きの様子や地獄の獄卒らが描かれます。一幅ずつ探検してみましょう。 初公開となる兜跋毘沙門天立像も必見。
第三章 昇天した遊女―円山応挙筆「江口君図」の謎に迫る。
円山応挙筆「江口君図」は、大坂・江口の遊女の亡霊が、西行と歌を詠み交わし、普賢菩薩と化したという謡曲「江口」の話に取材した作品です。白象に乗る遊女を普賢菩薩に見立てた、いわば普賢菩薩の見立絵(やつし絵)でもあります。幽霊画の名手ともいわれた応挙の写実の真骨頂は、あえて江口君を生身の美人として描かず、菩薩としての優美な姿に昇華させたところにあるといえるでしょう。
(23年8月10日報道内覧会にて許可を得て撮影・取材:遠藤)
[展示会情報]
「あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―Exploring the World Beyond: The Ten Kings of Hell」
日時:9月24日(日)まで 月曜、9月19日(火)休館、9月18日(月・祝)は開館
10:00~17:00 ※金曜18:00閉館。入館は閉館時間の30分前まで
場所:静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)
東京都千代田区丸の内 2-1-1 明治生命館1階
ホームページ : https://www.seikado.or.jp/
主催:静嘉堂文庫美術館(公益財団法人静嘉堂)
twitter:@seikadomuseum
問合せ: 電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
入館料:一般1,500円 大高生1,000円 中学生以下無料