暑い日が続きましたが、ようやく朝晩はいくぶん過ごしやすい秋日和となってきました。そこで、芸術の秋にピッタリの10月前半公開の映画3選を紹介します。
『ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌』10月6日公開〜NYを生きる若き4人の芸術家たちの苦悩
オペラ最高傑作「ラ・ボエーム」の設定を1830年代のパリから現代のニューヨークに置き換え、メインキャラクターにアジア人を据えるなどの大胆なアレンジのもと、これまでにないまったく新しいミュージカル映画として生まれ変わりました。舞台は大晦日のニューヨーク。凍える寒さの屋根裏部屋で、その日暮らしの夢見る4人の芸術家たち。どんな苦境にも前を向き、儚くも情熱的な日々を懸命に生きる若者たちの青春群像劇は、パンデミックという底知れぬ不安を経験し、その影響でひろがった格差や貧困の余波に身を置く私たちに今だからこそ響きます。
『リバイバル 69 ~伝説のロックフェス~』10月6日公開〜伝説のロックフェスの「真実」
ビートルズらの“新世代のロック”やフラワー・ムーヴメントによるフォークソングが大人気を博していた1969年。ロックンロールの復活を謳った奇跡の音楽フェスティバ ル「トロント・ロックンロール・フェスティバル1969」が開催されました。紆余曲折の末、チャック・ベリー、リトル・リチャード、ジーン・ヴィンセント、ジェリー・リー・ルイス、ボ・ディドリーらロックの創始者だけでなく、シカゴ、ドアーズといった当時大人気の大物や無名時代のアリス・クーパー、さらにはエリック・クラプトンらを率いたジョン・レノンまでもが急遽参戦し、新旧のロック・スターたちによる圧巻のパフォーマンスが繰り広げられた伝説の音楽フェスティバルの「真実」を描く傑作ドキュメンタリーです。
『アアルト』10月13日公開〜生誕125周年記念作品
フィンランドが生んだ世界的建築家でデザイナーのアルヴァ・アアルト(1898-1976)の生誕125年を記念して公開されるもの。彼の人生と生み出した作品を巡るドキュメンタリーであり、アルヴァと同じ建築家であった妻のアイノとの濃密な愛の物語であるとともに、アアルト夫妻が世界中を股にかけながら創造していく過程とその伝説をどのように作り上げていったかを、まるで観客が博覧会ツアーに参加しているかのようにみせていく独創的な作品となっています。北欧を代表する建築家でデザイナーのアルヴァ・アアルトは、どのような人生を歩んできたのか。どのようにして最初の妻であるアイノと出会い、2人で数々の傑作を生み出していったのか。彼らの手紙のやり取りを通してこれまで明かされてこなかった2人の関係を余すところなく描きます。もちろん、彼らがてがけた建築や、アルテックの家具やイッタラの食器といった後世に残る名作の誕生秘話も必見です。