『自分の人生』を受け入れながら生きたい・・・『ニューヨーク・オールド・アパートメント』監督インタビュー

『ニューヨーク・オールド・アパートメント』1月12日公開

最優秀作品賞・監督賞・女優賞ら9冠を受賞し欧米映画祭を席巻、NYの片隅に生きる母と息子たちを優しい眼差しで描いた感動作『ニューヨーク・オールド・アパートメント』が1月12日(金) より新宿シネマカリテほかで全国公開。このたび、マーク・ウィルキ ンス監督のオフィシャルインタビューが届きました。

「希望は私たちを無防備で愚かにし、私たちの最大の欠陥になり得ると同時に、人間の最大の美徳の一つでもあります。『ニューヨーク・オールド・アパートメント』は、希望の表と裏を両方描いています。

 

ニューヨーク在住中、私はアーノン・グランバーグの小説「Deheilige Antonio」(英題:SAINT ANTONIO /『聖なるアントニオ』)を見つけまし た。ウィット、ユーモア、詩的な美しさに満ちたこの移民の物語に、私が「アメリカン・ドリームの首都」に感じ続けてきた疑問が集約されていると感じました。

 

私自身は恵まれた移民だと思います。いままでたくさんの移住を経験しました。ドイツで育ち、ベルリンに住み、ニューヨークに住み、今はウクライナのキーウにいます。

 

私自身は人種差別をされた経験はありませんが、目撃したことはたくさんあります。ニューヨークにおいてです。悲しい気持ちになりました。自分が恵まれた境遇なことに罪悪感を感じたりもしました。その罪悪感がゆえに、私とは違った理由でニューヨークに来ることになった登場人物を描くことになったと考えています。 

 

本作は甘美な物語です。純朴そのものなティーンエイジャーの双子・ポールとティト。ミステリアスなクロアチア人女性・クリスティン、兄弟の母親・ラファエラ、スイス人の恋人・エドワルド。これらの登場人物たちは、私自身が『見知らぬ人』『部外者』として扱われた体験に由来する拒絶の感情や、住んでいる場所に属せていなく『愛され、受け入れられたい』と切望した、かつての体験による産物です。

 

私たちは責任の所在を問いかけたり、いたずらに哀れみを誘発するだけではない『移民の物語』を制作することに挑戦しました。主人公たちの等身大の姿を描くことで、実存を保証されたいという私たちの普遍的な欲求を深掘りしました。

 

あなたが不法滞在しているペルー人の自転車配達人であろうと、自暴自棄なクロアチア人の恋人であろうと、孤独なスイスの大衆小説家であろ うと、人々は『自分の人生』を受け入れながら生きたい。という願望に突き動かされているという点では、同じなのです。

 

この映画が日本で公開されることをとても嬉しく思っています。この物語が、何かしら皆さんの心に響いたり、ポール・ティト・クリスティンに親近感を頂いていただければ嬉しいです」

日陰者の移民が生きる意味を見いだしていく…

日陰で生きることしか出来なかったぼくらを照らした、ひとすじの愛…安定した生活を夢見て祖国ペルーを捨てNYで不法移民として暮らすデュラン一家。母ラファエラはウェイトレスをしながら二人の息子を女手一つで育て、息子たちも配達員として家計を支えるギリギリの毎日。

 

街から疎外された自分を“透明人間”と憂う二人の息子は、ある日、謎を秘めた美しい女性クリスティンと出会い、恋に落ちます。一方母ラファエラも白人男性からの耳触りのいい話に誘われ飲食店を開業しますが…。

 

アメリカン・ドリームを夢見る母と年頃のピュアな息子たち。そんな“大都会弱者”である貧しい移民家族に訪れた悲劇。日陰で生きる「何者でもなかった」彼らが恋をして、大切な何かに気づき、はじめて「自分」として生きる意味を見出していきます。

 

貧しくも懸命に生きる姿をリアルな息遣いが感じられるNYでの大胆なロケとウィットに富んだ詩的な映像美で紡ぎ出し、観る者の心を掴んで離しません。

 

『ニューヨーク・オールド・アパートメント』は、1月12日(金) 全国公開。

 

[作品情報]

『ニューヨーク・オールド・アパートメント』

原題: The Saint Of The Impossible

監督:マーク・ウィルキンス

脚本:ラ二・レイン・フェルタム

原作:「De heilige Antonio」(アーノン・グランバーグ)

出演:マガリ・ソリエル、アドリアーノ・デュラン、マルチェロ・デュラン、タラ・サラー、サイモン・ケザー

2020 年/スイス/英語、スペイン語/98 分/ビスタ/5.1ch

配給・宣伝:百道浜ピクチャーズ

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