堤幸彦、「15の記憶のサンプリングは、ひとりの話とも考えられる」『SINGURA』舞台挨拶

『SINGULA』公開中

堤幸彦監督最新作で、1人が15役を全編英語で演じる『SINGULA』(シンギュラ) が5月10日新宿バルト9ほかで公開中。5月13日にはスクリーン9で公開記念舞台挨拶が開催されました。

登壇したのは、主演のspi、堤幸彦監督、脚本・原案の一ノ瀬京介、横澤大輔プロデューサー。

 

spiは「僕、舞台挨拶が初めてなんですよ」と会場に集まった大勢の観客を前に、嬉しそうに挨拶。一ノ瀬は「この作品は僕が32歳の時に脚本を書いた舞台が元になっています」と明かします。

 

映画をつくるきっかけを聞かれた堤監督は、次のように説明しました。

 

「(映画の元となった舞台を観て)なんて不思議かつ刺激的な舞台なんだろうと思って、そこに浮かび上がってくるテーマに感動してその場ですぐに映画化した方がいいですよと言いました。そして映画化が決まった後に、ふと15人の役を1人でいいんじゃないかというアイディアが降ってきて、そしてこんな映画になりました」

 

キャスティングについては一ノ瀬が驚きのいきさつを明かします。

 

「英語ができて、15役を演じ分けられる人がspiさんしか思い浮かばなくて。すぐ夜中に電話して、その2日後には会ってspiさんの出演が決まりました」

 

実際に現場に入った際の気持ちを、spiは次のように吐露します。

 

「初めてお話を聞いた時、“たぎりますね”って答えたのですが、台本を読んで、絶対に自分には出来ないって思って泣きました。監督や一ノ瀬 さんにも相談したら、二人は大丈夫!大丈夫!みたいな感じで。まじかよ!と思いました」

 

また15役の演じ分けについては、「俳優論になってしまうんですが、役を外から作っていきました。まずは器を作って、その器の中でセリフを言えば、その役になるだろうと思って演じました」と答えました。

 

完成した映画を観た感想について、一ノ瀬は、「なんて気持ちの悪い映画なんだろうと思った。けれど、見終わったあとに、いいモノ観たなって気持ちになりました」と語ると、spiは「変な映画だと思いました。自分で演じたんだけど、合成で本当に15人いるみたい。そして、最初の始まり方が堤イズムで始まっていて、間や音が堤監督の作品だ!と感動しました」と応じ、と語りました。

 

横澤は「映画なのか、舞台なのか、洋画なのか、邦画なのかと。コロナ禍に作ったので映画館でかける前提で作られてない。当初メタバースでの上映とかの話もしていました。滅多にない作品になっているので、そこを楽しんで欲しい」と感想を語ります。

 

そして堤監督は、次のようにいまの気持ちを述べています。

 

「まだ編集したいくらいの気持。いろんなトライアルができる作品なので。あと、ラストに流れる主題歌のr-906さんの『イフ』という曲が、ボーカロイドでデジタルな作りでありながら、とても人間的で。やっぱり人間が作り出した作品だなと着地ができて良かったです。一人なんだけど、不思議に違って見えてくる。けど語られているのは怒りや悲しみなどの記憶のサンプリングで、一人の話としても見てくれてもいいと思う」

 

一ノ瀬も「「もともとこの脚本は、AIを通して今一度人間の尊さを感じて欲しいと思って書いたので、ぜひ観終わった後に自分はこんな風に 思ったとSNS上などでディベートを繰り広げられたら嬉しいです」とアピールしていました。

大反響!AIテーマの舞台劇が原作

前代未聞の企画である本作は、昨年のマドリード国際映画祭で主演男優賞賞を受賞、ニューヨークでの公開など大反響を巻き起こしています。

 

原案原作は、2019年2月舞台で上演されたAI達による討論劇[SINGULA]。堤監督を含め映画制作・プロデュースチームは、本作の映画化に向けて、これまで観たことがない、体感したことがない、狂おしく美しい映画体験を創りたい、そして本作品に含まれた非常に重要なテーマを世界中に届けたいという強い想いに賛同したスタッフ達が集結して創り上げました。

 

主題歌は、r-906 feat. 初音ミクが歌う「イフ」。2018年に活動を開始したボカロP・r-906による書き下ろし楽曲が、堤幸彦監督の映像世界観をさらに魅惑的で幻想的な世界に彩ります。

15人のAIアンドロイドによる討論デス・ゲーム

集められたのは「先生」と呼ばれる人間が作り出した15体のAIたち。同じ顔、同じスタイルで、違いは、それぞれに埋め込まれたチップによる性格や記録されている情報のみ。感情はナシ。規則を守らなければ即シャットダウンに。

 

そんな15体の人間そっくりで互いの素性を知らないAIアンドロイド同士が「人類は存続か、破滅か」という究極のお題でディベートを繰り広げるデスゲームを繰り広げます。

 

『SINGULA』はバルト9ほかで公開中。

 

[作品情報]

『SINGULA』

出演:spi 

監督:堤幸彦 

脚本・原案:「SINGULA」一ノ瀬京介 

主題歌:「イフ」r-906 feat. 初音ミク 

配給:ティ・ジョイ 

公式サイト:singula-movie.com 

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