孤高の天才“プリンス”の真実に迫るドキュメンタリー『プリンス ビューティフル・ストレンジ』がプリンスの誕生日6月7日(金)より新宿シネマカリテほか全国ロードショー中。このたび、プリンスを敬愛して止まないシンガーソングライターのスガ シカオと、字幕監修を担当した音楽評論家・吉岡正晴の舞台挨拶が行われました。

会場となった新宿シネマカリテは満員御礼。すでに2回観たというスガが「秘蔵映像というよりも、他の人が見たプリンス像の紹介だった」と述べると、吉岡は「ダニエル・ドール監督の意図としては、セレブレイトしたいということと、むしろこれからのプリンスを知らない世代へ伝えていきたいという想いがあったようです」との説明を受け、納得した様子。さらに「この映画は、『プリンスエステート』公認ではないのです。だから音楽も使えなかった」と吉岡は明かします。

確かにクレジットを見ると、2021年のカナダ映画とあるも、映像ソフトとして発売された形跡もありません。

ダニエル監督が取材を進める過程で2人の人物と接触したが、彼らは「プリンスと関係がある自分の映画」を撮りたいのだとわかり、断ったとのエピソードを紹介したあと、吉岡が「スガさんが自叙伝を出すとしたらどうですか」とスガに振ると、「イヤですよ、昔の写真なんて絶対出せない、僕が監修じゃなくちゃ。プリンスの場合は本人は亡くなっているわけだから」と理解を示しました。

スガがもっとも感動したシーンとして「これはネタバレになっちゃうけど、プリンスを世に出し、晩年も一緒にやっていたチャカ・カーンのインタビューかな。でも、この映画にレニー・クラヴィッツが出てこないのが解せないんです」と語ると、吉岡は「もちろん、ダニエル監督は再三オファーをしたそうです。でも『プリンスの死は受け入れられない』と言っていた」と理由を明かしました。

また、プリンスが音楽に生きた人であることを示すエピソードとして「頭の中で音が鳴るから、吐き出さないと死んでしまう」という言を紹介、「スガさんはどうですか」と話を振ると、スガは驚愕の面持ちで冗談めかして「僕は絶賛スランプ中なんで」と会場を沸かせました。

その上で、「プリンスは、幼少期は本当に普通の人。そこからアーティストを目指してものすごく勉強する。楽器も自ら何でも弾くし、コンサート終わったらそのままレコーディングしたって話もある。僕なんか、沖縄でコンサートあったら、沖縄のスタジオでレコーディングなんてしない。そのあと泡盛でしょ」と会場を沸かせました。

本作は68分という尺ですが、実は最初は120分、次に90分のバージョンがあったそう。吉岡はダニエル監督にエクステンデッド・バージョンのようなものを予定しているか尋ねたところ、プリンスのファンを集めたライブ映像なんかがいいかもしれないとの回答を得たと紹介。するとスガは「プリンスって、ちょっと冷たそうに見えて、実はファンとの絆を大事にしていたんだよね」と感慨深げに語りました。

2016年4月21日、57歳の若さで急死した天才アーティスト・プリンス。1978年に『For You』でデビューし、84年には自伝的映画『パープル・レイン』と同サントラがメガヒット。公式発売されたアルバムのトータルセールスは1億5千万枚で、12枚のプラチナアルバムと30曲のトップ40シングルを生み出し、7度のグラミー賞を受賞。2004年にはロックの殿堂入りを果たしました。

アメリカ・ミネアポリスで誕生したプリンス(本名:プリンス・ロジャーズ・ネルソン)は、住民の99%が白人という環境下で多感な青春時代を過ごしました。公民権運動の渦中、ジェームス・ブラウン等の黒人ミュージシャンも訪れた地元のブラックコミュニティ“ザ・ウェイ”での音楽的な原体験、恩師や家族が語る幼少期のエピソードは、興味深いものばかり。チャカ・カーン、チャックD、ビリー・ギボンズなど、プリンスを敬愛するミュージシャンの貴重なエピソードも多数収録。孤高の天才が如何にして誕生したのか、そして突然の悲劇までプリンスを愛する全てのファンに贈る傑作ドキュメンタリーです。

『プリンス ビューティフル・ストレンジ』は、6月7日(金)より新宿シネマカリテほか全国ロードショー公開中。

［作品情報］

『プリンス ビューティフル・ストレンジ』

原題:Mr. Nelson On The North Side

出演:プリンス、チャカ・カーン、チャックD、ビリー・ギボンズ他

監督:ダニエル・ドール/ 2021年/カナダ/英語/68分/16:9フル/ステレオ 提供:キュリオスコープ、ニューセレクト 

配給:アルバトロス・フィルム

公式 HP:https://prince-movie.com

©PRINCE TRIBUTE PRODUCTIONS INC.