「マッツ・ミケルセン生誕祭」11月14日公開
2025年11月22日に60歳を迎えるマッツ・ミケルセンを祝う「〈北欧の至宝〉マッツ・ミケルセン生誕 60 周年祭」が、11月14日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国公開。このたび、『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(12)からマッツ・ミケルセンのインタビューが公開されました。
あなたの演じたキャラクターは大きな苦悩を経験します。彼が持つ思想や独自性について教えてください。
「ストルーエンセの思想自体は、当時として特別に斬新というわけではありません。ヴォルテールなど同時代の思想家がすでに広めていた考えを、彼もまた信じていたにすぎません。ただ彼自身は革命を起こそうと積極的に動いていたわけではなく、医師として満足していました。けれども国王と出会い、王を支え、彼に自分の意見を持たせようとする中で、気づけば権力の中枢に近づいていった。最初は他人が王の耳元で囁くことを嫌悪していたのに、自分も同じことをしてしまう。もちろん彼には「善意」があったと本人は言うでしょうが」
しかし物語の通り、やがて彼は王妃との関係にのめり込みますね。
「頭ではなく心で動いてしまった結果ですね。彼は王妃と激しく愛し合うようになります。王、王妃、そしてストルーエンセ。3人がそれぞれ違った形で愛し合ってしまったために、事態は非常に複雑になります。国を導く立場にありながら王妃との関係を隠し、しかも二人の間に子供までできてしまう。本当に困難な状況でした。王妃の手紙からも、二人が激しく情熱的な恋をしていたことが確かにわかります」
この物語は実話に基づいていますが、デンマーク人としてこの歴史をどう認識していましたか?
「デンマークでは誰もが知っている話です。簡単に言えば「ドイツ人医師がやって来て、王妃と関係を持ち、国を支配し、やがて処刑された」というのが一般的な理解でしょう。でも掘り下げていくと、もっと複雑で多面的な物語が浮かび上がってきます。私たちも事実すべてを知ることはできません。推測や記録をもとに、どんな人間だったのか、なぜそうしたのかを想像するしかないのです」
歴史劇ですが、デンマーク語で撮影されたことも印象的でした。
「母語であるデンマーク語で演じられるのは嬉しいことです。ただ実際の宮廷ではフランス語やドイツ語が使われていて、デンマーク語は農民の言葉でした。それでも映画としてはデンマーク語で統一することで、物語を自分たちの文化のものとして描けたと思います」
ご自身は国際的にハリウッド作品でも活躍されていますが、北欧映画にこだわり続ける理由は?
「それは自分の文化的な基盤だからです。母語で芝居ができる環境はやはり居心地がいい。外国映画では「フランス語を話せ」「ピアノを弾け」「ロシア語を学べ」といった課題が重なりますが、デンマークに戻るとすぐに役に集中できる。だから今後も続けていきたいですね」
ミケル・ボー・フォルスゴーが映画初出演で国王・クリスチャン7 世を演じました。彼の「狂気」をどう見ましたか?
「私の演じたストルーエンセと同じように、まず「愛情」をもって見ていました。王には子供のような無邪気さと不安定さが同居していて、とても複雑な存在です。ミケルにとっては初めての映画で大変だったと思いますが、彼は「狂気のバージョン」と「無邪気な子供のバージョン」を演じ分け、その振れ幅が作品を豊かにしました。本当に難しい役どころでしたが、見事にやり遂げたと思います」
彼をサポートすることもありましたか?
「彼自身がどんどん自信をつけ、議論に加わり、俳優としての存在感を主張するようになりました。私は背中を押す程度で十分でしたね」
アリシア・ヴィキャンデルについて。彼女の魅力は何でしょうか?
「彼女は素晴らしい女優ですし、カメラが彼女を愛している。小さな仕草までもがスクリーンに映える。それはお金では買えない才能です。私たちも羨ましいくらいです」
監督ニコライ・アーセルの演出スタイルについては?
「非常に精密で、映像的にも巧みな監督です。ただスタイルだけではなく、役者に寄り添い、感情を引き出す力を持っていました。歴史劇をただ形式的に撮るのではなく、観客が心を動かされる作品に仕上げてくれました」
デンマークを離れているとき、一番恋しくなるものは何ですか?
「やはり家族です。それから母語であるデンマーク語、そして地元の食べ物。国そのものの美しさというより、自分の「基盤」であることが大切なんです」
デンマークについて世界で誤解されていることがあるとすれば?
「どんな国もそうですが、メディアや本だけでは本当の姿は伝わりません。実際に訪れ、その空気を感じることが必要です。だから興味がある人にはぜひデンマークに来てほしいですね」
「〈北欧の至宝〉マッツ・ミケルセン生誕 60 周年祭」【LINEUP】
●ブレイカウェイ(監督:アナス・トマス・イェンセン/2000 年/112分/デンマークほか)日本劇場初公開。本国で歴史的大ヒットを記録したデンマーク映画史上最高傑作とも言われる幻の名作
●フレッシュ・デリ(監督:アナス・トマス・イェンセン/2003 年/100 分/デンマーク)日本劇場初公開。日本では長らく視聴困難となっていたファン待望のハートフル・カニバリズム・ドラマ
●アダムズ・アップル(監督:アナス・トマス・イェンセン/2005年/94分/デンマークほか)試練と不条理の果てに予期せぬ“奇跡”が舞い降りる予測不能なダークヒューマンドラマ
●アフター・ウェディング(監督:スザンネ・ビア/2006 年/124分/デンマークほか)アカデミー賞 外国語映画賞ノミネート。ハリウッドリメイクもされた感動のヒューマンドラマ
●ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮(監督:ニコライ・アーセル/2012年/137分/デンマークほか)ベルリン国際映画祭 脚本賞&男優賞 W受賞デンマーク王室最大のスキャンダルを描いた歴史劇
●偽りなき者(監督:トマス・ヴィンターベア/2012年/115 分/デンマーク)カンヌ国際映画祭 主演男優賞受賞!力強い演技が観る者の魂を揺さぶる衝撃作
●メン&チキン(監督:アナス・トマス・イェンセン/2015年/104分/デンマークほか)日本劇場初公開。あなたの“マッツ愛”が試される?! 狂気的な怪演が光る奇想天外、クセ者たちのルーツ探しの狂想曲
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