今の時代にも通じる問い「家族とは?」『ジャスト・ライク・アット・ホーム』冒頭映像

「メーサーロシュ・マールタ監督特集 第2章」11⽉14⽇公開

2023年の第⼀弾特集上映に続き、⽇本で劇場初公開となる全7作品を新たにレストア/HD デジタルリマスターした珠⽟の作品群を⼀挙上映する「メーサーロシュ・マールタ監督特集 第 2 章」が11⽉14⽇(⾦)より開催決定。このたび、アンナ・カリーナを捉えた『ジャスト・ライク・アット・ホーム』冒頭映像が公開されました。

公開されたのは、50年近くの時を経て⽇本初公開となるメーサーロシュ監督の中期の傑作『ジャスト・ライク・アット・ホーム』の冒頭映像。

 

⾎のつながらない男と少⼥の、親⼦のような親密さにカメラが向けられた中年の男と少⼥、そしてアンナ・カリーナが織りなす奇妙な三⾓関係が、軽快な⾳楽にのせて描き出されます。

 

やがて、男からの⾝勝⼿な電話に毅然と応じながらも、どこか⼾惑いを⾒せてタバコをくわえるアンナ・カリーナの姿が。1960年代、ゴダール作品でミューズとして輝いた彼⼥とはまた異なる、⼀⼈の⼥性としての新たな魅⼒を感じさせます。

特集ラインナップ

(c) National Film Institute Hungary - Film Archive
(c) National Film Institute Hungary - Film Archive

『エルジ』

英題 The Girl 原題 Eltávozott nap

監督︓メーサーロシュ・マールタ

脚本︓メーサーロシュ・マールタ

撮影︓ソムロー・タマーシュ

出演︓コヴァーチュ・カティ

1968 年/ハンガリー/スタンダード/モノクロ/84 分/HD デジタルリマスター/G

字幕翻訳︓森彩⼦

字幕監修︓コロンツァイ・バーバラ

[story]児童養護施設で育ったエルジは、24 年ぶりに⼩村で暮らす実の⺟を訪ねます。再婚していた⺟は、娘の来訪に⼾惑い、彼⼥を姪と偽って新しい家族に引き合わせます。家族関係の修復も曖昧なまま街へ戻ったエルジは、⾏きずりの男と交際しながら、鬱々と⽇々を過ごす。ある⽇、素性の知れぬ中年男性がエルジの前に現れ、「君の両親は死んだ」と告げます。⻑編デビュー作であり、のちに繰り返し描かれる“養⼦”をテーマとした⾃伝的作品。

 

『⽉が沈むとき』

英題 Binding Sentiments

原題 Holdudvar

監督︓メーサーロシュ・マールタ

脚本︓メーサーロシュ・マールタ

撮影︓ケンデ・ヤーノシュ

出演︓トゥルーチク・マリ、コヴァーチュ・カティ、バラージョヴィチ・ラヨシュ

1968 年/ハンガリー/シネマスコープ/モノクロ/86 分/2K レストア/G

字幕翻訳︓森彩⼦

字幕監修︓コロンツァイ・バーバラ

[story]政治家の夫に先⽴たれたエディトは、保険⾦や邸宅の相続を頑なに拒否。⽗の名声が汚されることを恐れた息⼦は、⺟エディトを別荘に軟禁してしまいます。息⼦の婚約者も「看守」として⼿を貸すが、壊れていくエディトを⾒るうち、結婚という結び付きに違和感を募らせていきます。「家」に囚われた⼥性の苦しみと、彼⼥に寄り添う⼥性の交流が描かれたシスターフッド映画。

 

『リダンス』

英題 Riddance

原題 Szabad lélegzet

監督︓メーサーロシュ・マールタ

脚本︓メーサーロシュ・マールタ

撮影︓コルタイ・ラヨシュ

出演︓クートヴェルジ・エルジェーベトゥ

1973 年/ハンガリー/スタンダード/モノクロ/81 分/4K レストア/PG-12

字幕翻訳︓⾼橋⽂⼦

字幕監修︓コロンツァイ・バーバラ

[story]⼯場勤務のユトゥカは、ダンスパーティーで出会った⼤学⽣アンドラーシュと恋。彼に拒絶されることを恐れたユトゥカは、⾃分も学⽣であることを装い、名前も偽ります。やがてアンドラーシュはユトゥカの素性を知るが、両親には真実を告げられぬまま両家合同の⾷事会。アンドラーシュ家の階級意識が剥き出しになっていきます。アニエス・ヴァルダがそのシャワーシーンに強く魅了されたという、労働者階級とインテリの格差を背景に⼥性の選択を描く静かな⼒作。撮影はジュゼッペ・トルナトーレ作品で知られるコルタイ・ラヨシュ。

 

『ジャスト・ライク・アット・ホーム』

英題 Just Like at Home

原題 Olyan, mint otthon

監督︓メーサーロシュ・マールタ

脚本︓コーローディ・イルディコー

撮影︓コルタイ・ラヨシュ

出演︓ヤン・ノヴィツキ、ツィンコーツィ・ジュジャ、アンナ・カリーナ、サボー・ラースロー(ラズ

ロ・サボ)

1978 年/ハンガリー/ビスタ/カラー/109 分/4K レストア/PG-12

字幕翻訳︓⾼橋⽂⼦

字幕監修︓コロンツァイ・バーバラ

[story]アメリカからハンガリーへ帰国したアンドラーシュ。根無し草状態の彼は、放し飼いにされていた⽝に惚れ込み、飼い主の少⼥から強引に買い取ります。わだかまりを残したふたりは、やがて親⼦とも⾔い切れぬ親密な関係を育んでいきます。アンドラーシュのかつての恋⼈アンナも、そんなふたりを気に掛けています。彼⼥はアンドラーシュに、愛を告⽩するも……。⽗への献辞で始まる本作は、メーサーロシュにとって⾮常に個⼈的な⽗との物語だといえます。アンナ・カリーナがふたりの関係に揺らぎを与える⼈物を好演。

 

『⽇記 ⼦供たちへ』

英題 Diary for My Children

原題 Napló gyermekeimnek

監督︓メーサーロシュ・マールタ

脚本︓メーサーロシュ・マールタ

撮影︓ヤンチョー・ニカ

出演︓ツィンコーツィ・ジュジャ、ヤン・ノヴィツキ

1980-83 年/ハンガリー/スタンダード/モノクロ/108 分/4K レストア/G

字幕翻訳︓森彩⼦

字幕監修︓コロンツァイ・バーバラ、秋⼭晋吾

[story]1947 年、ソ連からハンガリーへ帰国したユリは、共産党員の養⺟マグダの保護下で育ちます。⽗は秘密警察に捕らわれ、⺟はこの世を去っていました。恐怖政治が布かれるこの国で、ユリは不安定な⽣活を強いられ、ある⽇、ユリはヤーノシュと名乗る男と出会います。彼は⽗と⽠⼆つの⼈物でした。「⽇記」三部作の第⼀部。冷戦下の⾃⾝の苦難を描き、1984 年のカンヌで審査員グランプリを受賞。撮影は義理の息⼦ヤンチョー・ニカが担当しました。

 

『⽇記 愛する⼈たちへ』

英題 Diary for My Loves

原題 Napló szerelmeimnek

監督︓メーサーロシュ・マールタ

脚本︓メーサーロシュ・マールタ、パタキ・エーヴァ

撮影︓ヤンチョー・ニカ

出演︓ツィンコーツィ・ジュジャ、ヤン・ノヴィツキ

1987 年/ハンガリー/スタンダード/カラー・モノクロ/132 分/2K レストア/G

字幕翻訳︓森彩⼦

字幕監修︓コロンツァイ・バーバラ、秋⼭晋吾

[story]マグダの元を離れたユリは、織物⼯場で働いています。映画監督を志すユリは、モスクワの⼤学で映画制作を学ぶことに。スターリンの死後、ユリは卒業制作として、労働者の実情を捉えたドキュメンタリー映画を完成させたものの、反-社会主義リアリズム的な内容から、再編集を命じられます。そしてユリは⽗がすでに死去したことを知らされます。「⽇記」三部作の第⼆部で 1987 年のベルリンで銀熊賞を受賞。モスクワ留学から 1956 年のハンガリー事件前夜までを描いています。ユリが⽗と⽠⼆つの男に抱く愛情は複雑になり、ふたりの関係は次第にメロドラマ性を帯び始めていく。

 

『⽇記 ⽗と⺟へ』

英題 Diary for My Father and Mother

原題 Napló apámnak, anyámnak

監督︓メーサーロシュ・マールタ

脚本︓メーサーロシュ・マールタ、パタキ・エーヴァ

撮影︓ヤンチョー・ニカ

出演︓ツィンコーツィ・ジュジャ、ヤン・ノヴィツキ、トゥルーチク・マリ

1990 年/ハンガリー/スタンダード/カラー・モノクロ/117 分/2K レストア/G

字幕翻訳︓森彩⼦

字幕監修︓コロンツァイ・バーバラ、秋⼭晋吾

[story]1956 年 10 ⽉ 23 ⽇、ブダペシュトで⺠衆が蜂起。モスクワで⾜⽌めを⾷っていたユリは、12 ⽉に⼊りようやくハンガリーへの帰国を許されます。ユリはカメラを⼿に、荒廃した街並みや犠牲者を⾒つめていきます。その年の⼤晦⽇、ユリたちは⼀堂に。政治的⽴場を異にする者たちも、仮装や⾳楽、ダンスに耽りますが、反動分⼦の弾圧はとどまるところを知らず……。「⽇記」三部作の最終作。1956 年のハンガリー事件から⺠主化運動の挫折までを描き、戦争の余波と闘いの⾏⽅を問います。

 

公式サイト:meszarosmarta-feature.com