染谷将太、「正義と悪は曖昧なものだ」『廃用身』公開決定

『廃用身』2026年5月公開

染谷将太主演で、久坂部羊の小説を実写映画化した『廃用身』が、2026年5月に TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開決定。このたび、主演、監督、原作者のコメントおよび、ティザービジュアルが公開されました。

公開されたティザービジュアルは、森に囲まれた芝生の上で、車椅子の老人たちが輪になり風船遊びをする光景を、俯瞰で捉えた一枚。

 

前景には、偶然カメラの前を横切ったかのような蝶がブレた姿で大きく映り込み、遠近感のズレが穏やかな風景に微かなめまいを与えています。

 

「この楽園は異常ですか?」というキャッチコピーに導かれるように細部へ目を凝らすと、人物の表情はぼかされ、手足を欠いた老人の姿が複数確認できるほか、重厚なタイトルロゴもまた、意図的に画数を欠いたデザインとなっています。

 

さらにボディコピーには、「<画期的な>デイケアを行う『異人坂クリニック』。“身体のリストラ”をされた老人たちは、今日も元気に笑っている」と記され、穏やかな光景の裏に潜む不穏さを強く印象づけます。

 

静かで整った世界の水面下に、説明のつかない異質さや淡々とした不気味さが漂い、ここで“何かが起こる”ことを予感させます。

終末期医療の最前線にいた者だから描ける世界観

外務省医務官を経て、在宅訪問医として終末医療の最前線に立ち続けてきた著者自身の経験から生まれた本作は、超高齢社会に突入した今の日本社会と不気味なほど地続きのテーマを孕み、半歩先の未来を想起させるヒューマンサスペンス。

 

主演は染谷将太。デビュー以来、国内外で高い評価を受け、映画『ヒミズ』で第 68 回ヴェネツィア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人俳優賞)を受賞するほか、数々の映画賞を受賞し、幅広い役柄をこなす変幻自在な演技力で、圧倒的な存在感を放つ実力派俳優として鮮烈な印象を残してきました。

 

今年も『爆弾』『新解釈・幕末伝』『イクサガミ』など話題作の出演が続き、NHK 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で、時に飄々と時に不敵な笑みを浮かべて幻の天才絵師、喜多川歌麿を演じました。

 

本作では、医療の限界を超えたいと力強く訴え、理想を追い求めるあまり、合理性と狂気の危うい狭間へと踏み込んでいく主人公、医師・漆原糾を怪演しています。

 

監督と脚本を務めるのは𠮷田光希。東京造形大学在学中より諏訪敦彦に師事し、塚本晋也作品での現場経験を経て、自主製作映画『症例 X』で第 30 回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)の審査員特別賞を受賞。さらに第61回ロカルノ国際映画祭新鋭監督コンペティション部門の入選、『家族 X』『三つの光』のベルリン国際映画祭をはじめとした多数の国際映画祭での評価を通じ、世界で注目を集めてきました。

 

本作は、そんな𠮷田が学生時代に原作と出会って衝撃を受けて以来、20 年にわたり温め続けてきた、渾身企画の映画化だ。

映画化不可のはずが…

染谷将太は次のようにコメントしています。

 

「自分が𠮷田監督と出会ったのは高校生の頃でした、素敵な作品と素敵なお人柄に惚れてから長い年月が経ち、この度お話を頂いた時、驚きと喜びに溢れました。そして頂いた台本の題名が『廃用身』でした。久坂部先生の衝撃作を𠮷田監督が実写化、もはやある種の恐怖を感じました。とんでもない作品になるなと。それと同時に漆原糺という主人公を演じる恐怖にも襲われました。正義と悪は曖昧なものだという事は様々な作品で語られてきました。しかしこのような切り口から描かれ、世に投げかける作品は無かったのではないでしょうか?社会的な意味も大いに含むこの作品を映画芸術として𠮷田監督は正々堂々と描き切りました。1 人の医師の、1 つの症例のような人生を、皆様に目撃して欲しいです」

 

 

𠮷田光希監督は次のようにコメントしています。

 

「原作を初めて読んだときの感触は、今も消えずに残っています。心がどこにも置けなくなる不安と同時に、自分の未来が冷たく、正確に切り取られた気がしました。 あの読後に立ち上がった名付けがたい気配を、映画という形で問い直したい──その思いが、長いあいだ自分を突き動かしてきました。自由な映画表現を受け止め、原作を託してくれた久坂部羊さんに、心から感謝いたします。この作品は、誰もが自身の未来を映し出し、息を潜めて向き合わざるを得ない問いを、優しく、しかし容赦なく投げかけます。超高齢化社会の現実に直面したとき、ひとりの医師が下す選択を、観る人の皮膚の下まで、静かに届けたいと思いました。どうか、目を背けないでください。ここに映るのは、誰かの母でもあり、父でもあり、やがてあなた自身でもある、避けられない現実です。この問いが、それぞれの場所に残ることを願っています」

 

久坂部羊は次のようにコメントしています。

 

「まさか映画化されるとは思いませんでした。なにしろ『廃用身』が出版されたときの宣伝文句が「映画化、絶対不可能!」でしたから。「切って楽になれるなら切ってほしい」は、私が現場で実際に聞いた言葉です。介護に関わる方、介護に悩む方、すべての人に、常識の枠を取っ払ってこの映画を観ていただきたいです」

画期的な老齢期医療の末路

ある町のデイケア「異人坂クリニック」に通うお年寄りの間で、漆原院長(染谷将太)が考案した“画期的な”治療が密かに広まっていました。究極のコスパの良い介護を目指すため、<廃用身」>(麻痺などにより、回復見込みがない手足のこと)の切断を行った結果、「身体も心も軽くなった」「厳しい性格が柔らかくなった」などと予想外の“好ましい副作用”が現れたというのです。

 

噂を聞きつけた編集者・矢倉は、老齢期医療に革命を起こす可能性を感じ取り、漆原に本の出版を持ちかけます。しかしやがて、デイケアに関するとある内部告発が週刊誌に流出。さらに、患者宅で起きた衝撃の事件をきっかけに、すべてが暗転していきます…。

 

『廃用身』は、2026年5月 TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開。

 

[作品情報]

『廃用身』

原作:久坂部羊『廃用身』(幻冬舎文庫)

監督・脚本:𠮷田光希

主演:染谷将太

配給:アークエンタテインメント

©2025 N.R.E.