国立科学博物館、科学の研究者目線で“編集”された企画展「かこさとしの科学絵本」開催中

「かこさとしの科学絵本」6月14日まで開催中

東京・上野の国立科学博物館では、6月14日(日)まで生誕100年記念「かこさとしの科学絵本」が開催中。開催に先立ち3月23日に行われたプレスイベントの模様をお伝えします。

かこさとし(1926−2018)は、1959(昭和34)年に『だむのおじさんたち』でデビューして以来、600冊を超える作品を世におくりだした絵本作家です。彼の手がけた絵本の分野は幅広く『だるまちゃん』などの愉快な作品に加え、『かわ』『海』『地球』『宇宙』をはじめとする200冊近いかがく絵本を制作しました。これらの作品はサイエンスコミュニケーションの先駆けともいえ、科学教育の発展を促しました。本展はそんなかこさとしの生誕100年を記念し、彼の主要な科学絵本を中心に科学教育への熱い信念や自然科学への飽くなき探求心を原画とともに紹介するものです。

 

今回の見所は、国立科学博物館植物研究部菌類・藻類研究グループ研究主幹の北山太樹さんが、研究者の視点で国立科学博物館ならではの展示を施しているところ、原画が展示されているところです。北山さんが優しい語り口で、今回の展示を案内してくれました。

第一章 科学絵本の世界へようこそ

エントランスは、かこ先生のウェルカムボードになっており、来場者に向かって微笑みかける仕様となっています。この裏側がかこ先生の部屋に模した設えとなっています(第三章)。

第二章 科学絵本の歴史とかこさとしの年譜

福沢諭吉が留学先から持ち帰った物理や自然科学の本を翻訳し日本人向けに作り直した科学本の黎明期、「小学科学絵本」、図鑑的な絵本「キンダーブック」、そこから「こどものとも」を経て、かこさとしの絵本が誕生するまでの歴史が紹介されています。

「ダムのおじさんたち」、「かわ」へと繋がる流れが年表で確認できます。

福音館の編集者・松居直の提案により、戦前の日本の風景の戦後版「かわ」をつくったのだということです。

第三章 絵本作家の部屋

ここは第一章のエントランスの裏側にあたり、かこ先生の部屋を模した空間です。

机の上に載っているのはかこ先生が使った道具です。

本棚には、だるまちゃんがかくれんぼしているアニメーションも。

部屋の隅に腰掛けているだるまちゃんは、加古総合研究所代表・鈴木万里さんからの寄贈品。

第四章 かこさとしの科学絵本

「かわ」がもっとも重要な作品だと北山さんが語ります。

「かわ」の表紙に登場しているのは幼少期の万里さんと男の子にした妹さんが遇われているそう。

ここはかこさとしファンにとってひとつの目玉展示。当初のバージョンと、2016年の新バージョンが比較できるようになっています。

絵巻仕立てに作り直して川全体がつながるようにしたことについて、「絵本化を見越して、かこは予備となる絵も描いておいたので、絵巻仕立てにするにあたっても欠ける部分がなくつくることができた」と万里さんは明かしました。

 

旧版の一節「まちの ごみや きたない みずが ながれこんで、かわは すっかり よごれてしまいました。」が、2016年版では削除されている点に北山さんが言及。「これは、いまや公害問題が解決されたことを反映し、これからも綺麗なままでいてほしいという願いが込められているのです」と解説してくれました。

北山さんは「海」で、ワカメを緑ではなく、茶色に描いていることに感心していました。

「地球」「宇宙」「人間」の原画や下絵も見ることができます。

第五章 生物進化を絵本でたどる

かこ先生が晩年打ち込んでいた未完の大作「宇宙進化地球生物放散変遷総合図譜(生命図譜)」の原画と、生命図譜に通じるモノとして描かれた「生命の発生と進化」が展示されています。

 

本展示最大の目玉と言えるでしょう。

一枚で対数表示ですべての生物を描こうとしており、生命図譜はもはや絵本の枠に収まらず、全長は約5メートルにも及びます。

 

圧倒されますので、ぜひ現物を体感してください。

第六章 科博は巨大な立体科学絵本

ここでは、科学絵本と科学博物館の共通点を取り上げています。

地球館では、今日までの宇宙の歴史、地球の歴史、生命の歴史、人類の歴史をアニメのスクリーンで説明しています。「わたしは博物館は巨大な科学絵本だと考えているので、今回はひとつの仕掛け絵本を作ってみました」と北山さんは解説してくれました。

 

タブレットの普及によりい紙の本が少なくなっている中、「じぶんで紙をめくったり、読み聞かせたりといった様々な役割がありこれからも紙の本はなくならない」と北山さんは語りました。

 

そして、「いつもの展示と違い、世の中の人のためになる展示ができて嬉しい」と冗談を飛ばし、今回の展示紹介を締めくくりました。

[開催概要]

企画展 生誕100年記念「かこさとしの科学絵本」

場所:国立科学博物館(東京・上野公園)日本館1階 企画展示室および中央ホール

期間:2026(令和8)年3月24日(火)∼6月14日(日)

開館時間:9時∼17時

※4月25日(土)∼5月6日(水・休)は18時まで ※入館は各閉館時刻の30分前まで

休館日:月曜日、5月7日(木) ※ただし、3月30日(月)、4月27日(月)、5月4日(月・祝)、6月8日(月)は開館

入館料:一般・大学生:630円(団体510円)、高校生以下及び65歳以上:無料 ※常設展示入館料のみ

※入館方法の詳細等については、ホームページを参照https://www.kahaku.go.jp/

主催:国立科学博物館

特別協力:加古総合研究所

監修者:国立科学博物館植物研究部菌類・藻類研究グループ研究主幹 北山太樹、加古総合研究所代表 鈴木万里

https://www.kahaku.go.jp/