郷愁を破壊する優しく残酷な映画…『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』本編映像

『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』

第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品されたジェームズ・グレイ製作・監督・脚本の最新作『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』が5月12日(金)より公開。このたび、「高潔な人となれ」と、優しく強い意志を持って孫を諭していくアンソニー・ホプキンスの姿を切り取った本編動画が公開されました。

公開された本編映像は、ポールにとってこれからの人生の指針となるような大事な時間を切り取ったもの。

 

進学校に転校、環境が代わって元気が無くなったポールを心配した祖父アーロン。「新しい学校はどうだ?」と問いかけると、ポールは友人間で交わされる人種差別的な会話について、うんざりはするけども「何もしない」と、 “学校で生きていくためにはそれが当然”という諦めた態度を取ってしまいます。

 

しかし、祖父のアーロンは「お前は行動や言葉で示さなくては」「高潔な人となれ」と優しく、強い意志を持って諭していきます。

 

「握手とハグだ」「大好きだよ」お互いを真剣に思いあう、かけがえのない2人の絆を描いたシーンとなっています。

© 2022 Focus Features, LLC. 
© 2022 Focus Features, LLC. 

「しばらく答えのない問いと向き合うことに…」

石井光太(ノンフィクション作家)は、「『社会で成功をつかむには、差別や格差といった不条理に目をつぶらなければならない』子ども時代に散々反発しながら、成長と共に大人たちに慣らされ、忘却の彼方に消し去った社会の非情な原理。平穏な今を享受していたはずの私は、本作によって今更ながらにそのことを突き付けられ、どうすればいいのか!」とコメント。

 

今村久美(教育支援NPO代表)は、「社会の規範とされることからはみ出さないように生きること、それを良いこととして、私たちは今を生きる子どもたちに強いてはいないか。心を殺し、あげられない声をくみとれないまま、明日の“悪い子”をつくっていないか。この、アメリカ社会の昔話は、いま日本で生きている私達に大切な問いを投げかけている」と問題提起します。

 

大空幸星(特定非営利活動法人あなたのいばしょ理事長)は、「目に見えない社会の規範は不条理さと孤独を想起させる。そこから逃げようと試みる主人公たちの行動は人間の本能そのものだ。この映画が醸し出すノスタルジアと社会の現実を誤魔化さずに描いている事実との格差が面白い。これを観た後、我々はしばらく答えのない問いと向き合う事になる」と鋭いコメント。

 

金原瑞人(法政大学教授・翻訳家)は、「『え、ここで終わるの?』という気持に襲われたのだが、エンドロールをながめるうちに、エンディングにこめられた監督の深い絶望とかすかな希望が伝わってきて、ぞくぞくするほどの感動がこみあげてきた。観客にまったくこびることのないこの作品は、映画を愛する観客への深い信頼から生まれたに違いない」と納得の様子。

 

小島秀夫(ゲームクリエイター)は、「誰にでも身に覚えのある子供の頃の幼い”出来心“。オトナになるために犠牲にした家族や親友との大切な瞬間。それらの喪失を悔恨させる。しかし、成長した今、我々大人達は理解する。あの頃にタイムトラベルしたとしても、やはり同じ“選択”をするだろうことを。郷愁を破壊する、優しく残酷な映画。感動とは違う身悶えする“感傷”が燻る」と本質を語ります。

 

竹林亮(映画監督)は、「アマゾンの奥地、火星の向こうの海王星の次は、ジェームズ・グレイ監督個人の記憶の中の生々しい経験への旅でした。リアルな『アメリカンドリーム』の光と影の中で揺さぶられて炙り出された家族の結びつきは矛盾と葛藤に満ちていて、尚且つ暖かくて、まったく整理がつかないところが好きでした。そして、そんな家族の繋がりは、いくら少年が背中を向けて逃げたくなっても、今までどこかで彼を守りつづけてきたのだという証がこの映画そのものであることに気がつき、胸が熱くなりました」と理解を示します。 

 

西野理子(家族社会学者)は、「1980年代の経済成長を遂げたニューヨーク。出自による差別を経験した白人家族が、ある程度の豊かさを達成した一方で、黒人への差別は過酷だ。成熟社会で少年ポールは、祖父、母らに救われていながらも、心の傷が重なっていく。将来の夢を見ては、心が折れていく。経済成長後の現在の日本社会の子どもたちが、少年の姿に重なる」とコメント。

 

三宅唱(映画監督)は、「映画一本で世の中全部がひっくり返るとは思わないが、誰かの生き方に革命が起きるくらいの力は余裕である。10代の主人公たちが高潔に生きようとするように、ジェームズ・グレイ監督も、高潔であろうとすることを一切諦めていない。本気の映画だ。10代の自分やかつての友人たちに見せたい。今、一番ヒットしてほしい!」と感動を口にします。

 

山崎まどか(コラムニスト)は、「親密で切実な友情と家族の物語だからこそ、80年代のニューヨークの空に広がる雲のような“分断の時代”の兆しが鮮やかに浮かび上がる。少年と祖父が飛ばすおもちゃのロケットがあまりに切ない」と作品の余韻を口にします。

アン・ハサウェイ、アンソニー・ホプキンスら賞レース常連の豪華キャストが競演

本作品は、差別と格差が根付く80年代NYを舞台に、多感かつ繊細な12歳の少年ポールが培っていく友情、そして微妙な変化を迎える家族との関係を通して、時代を取り巻く理不尽や不公平を浮き彫りにします。

 

『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』は、5月12日(金)より公開。

 

[作品情報]

『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』

原題『Armageddon Time』

製作・監督・脚本:ジェームズ・グレイ 

出演:アン・ハサウェイ、ジェレミー・ストロング、バンクス・レペタ、ジェイリン・ウェッブ、アンソニー・ホプキンス

2022年/アメリカ/スコープサイズ/115分/カラー/英語/5.1ch//日本語字幕翻訳:松浦美奈/PG-12 

配給:パルコ ユニバーサル映画  宣伝:フラニー&Co. 

© 2022 Focus Features, LLC.