細田守ら世界のクリエイターが奇しくも“オオカミ”をモチーフに使うワケ『ペルリンプスと秘密の森』

『ペルリンプスと秘密の森』12月1日公開

『父を探して』で第88回アカデミー賞⻑編アニメーション賞にノミネートされた“イベロアメリカ”の最重要作家のひとりアレ・アブレウ監督の最新作『ペルリンプスと秘密の森』が12月1日に公開。このたび、予告編が公開されるとともに、アブレウ監督と、アブレウ監督がファンだと公言する細田守監督が語り合う対談が公開されました。

アブレウ監督の前作『父をさがして』と、12月1日公開の新作『ペルリンプスと秘密の森』。主人公が小さな子供という共通点について、細田監督は視点の違いを感じたと指摘します。

 

「『父を探して』は、多分監督の自分の話なんだなという気がして。それに対して『ペルリンプスと秘密の森』は、多分お子さんの話なんだろうなって」

 

するとアブレウ監督自身も 「『ペルリンプスと秘密の森』は子ども時代に潜りこんでいくという感覚で作っています」と答えます。

 

細田監督についてファンであると同時に、自身にとってアニメーションの師匠の一人だと公言するアブレウ監督。その理由のひとつについて、いつも“次元の違う場所”が出てくることを例に挙げました。

 

「自分達の世界を違う目で、見つめることができます」と魅力に言及すると、細田監督も「もっと新鮮に、世界を見れたらいいなと思って映画を観たいと思うので。そういうことを、見る人にも感じてほしいなあと思います」と同意します。

 

子どもを主人公に映画を作っていくことの魅力と、届けたい想いについても答えています。

 

「こんなストーリーの作品、今まであったかな?って。多分無いと思うんですよね」と細田監督が問うと、アブレウ監督は次のように答えます。

 

「僕の映画はすべて、僕が見つけた小さな断片から生まれます。今回は一人の子どもが、森のある場所から出ていこうとするイメージです。オオカミの格好をした子どもで顔の化粧が落ちかけて、水に覆われた森から出ていこうとしていました」

 

物語のスタートとなったクリエイションの源はあくまでもイメージであることを明かすと、細田監督は「まず最初は、絵からなんですね!ひっくり返すようなストーリーも、一種のオチから入ったんじゃないかと思ったんだけど」と驚きを見せました。

 

『ペルリンプスと秘密の森』は、オオカミのような姿をした子供達が主人公。そこから、細田監督が手がけたオオカミを主人公にした『おおかみ子供の雨と雪』(2012)やトム・ムーア監督による『ウルフウォーカー』(2020)にまで話題が及びます。

 

細田監督は、トム・ムーア監督と対談した際、「彼もちょうどオオカミの子どもの話を作っていたから、僕ら似ているね」と言っていたら、また似ている人が現れた!」とアブレウ監督に笑顔を見せます。

 

世界の全く違う場所で、複数のクリエイターが同じテーマを表現するために、オオカミという同じモチーフを使用するという不思議な出来事。

 

「“オオカミと子ども”じゃなきゃ見えない何かを、きっと描こうと思ってオオカミにしているんでしょうね。きっと」

 

細田監督は自身の『おおかみ子供の雨と雪』に込めたメッセージについて明かすなど、互いのクリエイションに対して興味が尽きないようでした。

森を守りたい…現代人へ問いかける、現実と希望

テクノロジーを駆使する太陽の王国のクラエと自然との結びつきを大切にする月の王国ブルーオの二人の秘密エージェントは、巨人によってその存在を脅かされる魔法の森に派遣されています。

 

森を守る唯一の方法は、光という形でこの森に入り込んだ「ペルリンプス」を見つけること。敵対していた二人は共通する目的のために協力し合うことに。しかし平和をもたらすという謎の生物を探すうちに、物語は思いがけない結末にたどり着きます。そこに隠された現代への問いかけとは…?

 

『ペルリンプスと秘密の森』は12月1日公開。

 

[作品情報]

『ペルリンプスと秘密の森』

原題:Perlimps

脚本・編集・監督:アレ・アブレウ(『父を探して』) 

音楽:アンドレ・ホソイ/オ・グリーヴォ

2022年 ブラジル/スコープサイズ/80分

日本語字幕 星加久実 

後援:在日ブラジル大使館 

配給:チャイルド・フィルム/ニューディアー

(c) Buriti Filmes, 2022