ウディ・アレン、「自分で映画を撮るのは脚本を守るため」太田光との対談動画で明かす『サン・セバスチャンへ、ようこそ』

ウディ・アレン監督最新作1月19日より公開中

ウディ・アレン監督最新作『サン・セバスチャンへ、ようこそ』が、1月19日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国公開。このたび、ウディと彼を敬愛して止まない太田光の対談動画が公開されました。

百戦錬磨の太田もこのときばかりは緊張の面持ち。

 

20年以上前にニューヨークのクラブで、ジャズ奏者でもあるウディがクラリネットを吹いているときに少しだけ挨拶を交わしたときを振り返りながら、つぎのように切り出します。

 

 「その時から監督はヒーロー。自分は映画をいずれ撮りたいと思っているが、スタンダップコメディを続けていて、監督はさらにみずみずしい映画を撮り続けていて。ちっとも僕と監督との関係が変わらないということに、不甲斐なくもあり、監督の偉大さを改めて感じ、今こうやって話すことができて光栄です!」

 

それに対してウディは次のように返答します。

 

「自分に正直に進めば、スタンダップコメディであれ映画であれ文学であれ、ついてきてくれる人はいる。執着して、ふがいなさも糧にして進んでいくことが大事でしょうね」

 

太田が「ウディ監督自身を投影した主人公モートが、トリュフォー、ゴダールらと比べて、ああいう天才になれないと頻りに言っているのを観ていると、僕にとって監督は彼らと並ぶ映画史に残る監督なのですが、監督はそれでもまだ自分の居場所に対して、満足していないという気持ちがあるんでしょうか」と質問。

 

するとウディ監督は、「映画など表現芸術の世界の人間なら、自分の作品に満足する人ことはないと思う」と返答します。

 

続けて太田が、 主人公が居心地のいい場所や逃げ場所を探し続けていることに触れ「きっとその居場所は見つからないけど、一生をかけて探し続けるんだ、という監督自身のメッセージを感じています。自分は、日本のテレビでは成功している方だと思うが、それでも映画のひとつも作れない状態が続いていて、スケールは違うがそういう自分に、『ウディ・アレン監督がそうなら自分はそれでもしょうがないのかな』と、いつも新作を観るたびに勇気づけられています」と思いを込めます。

 

するとウディ監督は「取り組み続けていればいつか映画を作る機会が訪れると思います。映画作りは運や環境を要しますよね。でも、やるぞという執着心や信念が一番大切です。おっしゃった通りこの世の中は色々な辛い状況がありますが、人生をかけて自分の想像というものを芸術的に到達したものに完成させること、この世の中の文明、その一部に貢献すること、あるいは人々を楽しませ痛みを和らげること、そうしたゴールを掲げ て進むのは人生をかける価値がある。それが、私がしていることで、きっと太田さんのコメディもそうですよね。取り組み続ければ、映画を作る機会もいつか訪れると思いますよ」と語りかけました。

 

太田が、劇中ルイス・ブニュエル監督作『皆殺しの天使』のオマージュシーンについて「あれほど滑稽に、共感を持って、感情のさじ加減も絶妙に描けるのは、やはりウディ監督のオリジナルとして映画シーンに残る名シーンだと思います」と絶賛すると、ウディ監督は、「私はファンタジーに撮ったが、すべての賛辞はブニュエルにいくべきだと思う」と名匠にリスペクトを込めて答えました。

 

太田が「このレベルを保ちながら息をするように映画を撮れる人。元々の才能が違うのでしょうか」と、多作なウディ監督に質問すると、意外な核心を明かしました。

 

「とにかく書く作業が好きでずっと書いているんですよ。なぜ映画を撮り始めたかというと、脚本を他の監督に渡すと考えていたものと違う映画になるので、脚本を守るためというのが正しいかもしれません。他の監督に依頼するときは、本当に共感してくれる人だけです。アイデアがどんどん浮かんでくるので書き続け、書くこと作ることを楽しんでいます。そもそもお掛けを稼ぐとか賞を獲るためではなく、ただ楽しいからやっているということですよね。自分でやっていることを他の人にコントロールされたくない。例えばお金を出したからって後ろから指示されるのって嫌ですよね。だから自分で責任を持つ。吉と出るか凶と出るかは自分次第。太田さんはまだ若いですから、これからこうした経験をされると思いますよ」

 

最後に太田が、「今も自分をコメディアンだという自覚はあるか?」と尋ねると「以前のようにキャバレーでスタンダップコメディはしていませんが、今でもコメディアンだと思っている」と答えたウディ監督。太田は「とっても勇気づけられました」と、満面の笑顔で感謝を述べました。

映画とは?人生とは?

かつて大学で映画を教えていたモートは、今は人生初の小説の執筆に取り組んでいる熟年のニューヨーカー。そんな彼が映画業界のプレス・エージェントである妻スーに同行し、サン・セバスチャン映画祭に参加することに。ところが、スーとフランス人の著名監督フィリップの浮気を疑うモートはストレスに苛まれます。モートが現地の診療所に赴くと、人柄も容姿も魅力的な医師ジョーとめぐり合い、浮気癖のある芸術家の夫との結婚生活に悩む彼女に恋心を抱きます。サン・セバスチャンを訪れて以来、なぜか昼も夜も摩訶不思議なモノクロームの夢を見るようになったモートは、いつしか自らの“人生の意味”を探し求め、映画と現実の狭間を迷走していきます...。

 

『サン・セバスチャンへ、ようこそ』は、1月19日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国公開

 

[作品概要]

『サン・セバスチャンへ、ようこそ』

原題:『Rifkin's Festival』

脚本・監督:ウディ・アレン

撮影監督:ヴィットリオ・ストラーロ

出演:ウォーレス・ショーン ジーナ・ガーション ルイ・ガレル エレナ・アナヤ セルジ・ロペス クリストフ・ヴァルツ

 

2020 年/92 分/スペイン・アメリカ・イタリア/英語・スペイン語・スウェーデン語/カラー・モノクロ/ビスタ/原題:Rifkin’s Festival/日本語字幕:松岡葉子 提供:ロングライド、松竹 配給:ロングライド

longride.jp/rifkin/

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