『廃用身』5月15日公開
染谷将太主演で、久坂部羊の小説を実写映画化した『廃用身』が、5月15日(金)より TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開。このたび、原作者の久坂部羊と監督の吉田光希が登壇したトークショー付き試写会が実施されました。
公開があと1か月後に迫った4月15日、東京・神楽座にて開催された試写会では、原作者の久坂部羊と映画の監督を務めた𠮷田光希が登壇し、原作の背景や映画化に至った経緯や、本作が内包するテーマについて語りました。
久坂部は、映像化のオファーが来た当初は「大丈夫 かな……?」と不安の方が大きかったというも、「吉田監督の原作に対する思いが非常に深かったので、大変良い作品に仕上がったと思っています」と信頼を寄せました。
不安が大きかった理由は、原作の出版当時「映像化、絶対不可能!」との宣伝文句を付けられていたから。過激過ぎる作品として受け止められるのではないかと不安視していた久坂部だが、作品内に登場する印象的なシーンについて「ロケーションを含め、原作の持つ空気感が丁寧に再現されている」と評価しました。
本作は、外務省医務官を経て、在宅訪問医として終末医療の最前線に立ち続けてきた久坂部自身の経験から生まれた物語。自身が勤めていた実在するクリニックをモデルにしており、訪問診療を通して目の当たりにした高齢者とその家族の関係性、そして日常の中に潜む危うさ。そうした現実の積み重ねが、本作の着想につながっているといい、「理想的なケアの姿だけでなく、さまざまな事情を抱えた家族の在り方や、思いがけない事故の現実も含めて描いた」と語りました。
吉田監督が本作と出会ったのは、大学生の頃。「読み終えたあと、心の置き所がなくなるような、宙吊りにされたような気分になりました」と振り返ります。「誰かに答えを迫られているわけではないのに、“自分はどうすればいいのか”と考え続けてしまう。いつか映像化したい」と長年温め続けてきたと明かしました。
その想いは、偶然の出会いをきっかけに実現。プロデューサーとの何気ない会話の中で、本作への関心が一致。「今作を制作するアークエンタテインメントの中でも、一度企画が持ち上がったことがあったそうで。無数にある小説の中で、やりたい作品が一致するというのはなかなかの奇跡」と、偶然が映画化を大きく前進させたと話します。
脚本づくりについては、久坂部から「自由に書いてほしい」と一任されたことも明かされました。久坂部は原作と映像では表現方法が異なるからこそ「完成した作品から学ぶことも多い」と語り、これまでも基本的にノータッチの姿勢を貫いてきたといいます。
その言葉を受け、「自分の色に塗り替えるのではなく、原作から受け取ったものを大切にしたかった」と吉田監督。本作のテーマを「単純な是非にとどまらず、異人坂クリニックが社会の縮図のように見えたり、その中での同調圧力や、第三者が当事者の在り方を語ってしまう危うさなど、現代にも通じる奥行きがある」と解釈し、その問いを映画として提示することを意識したといいます。
それに対し、久坂部は「そうした側面が作品の中にしっかり表れていた」と評価。本作を通じて「どんな医療にも光と影がある」ということを伝えたかったといい、良い結果だけで終わるものではなく、予測できない現実や、その先にある葛藤まで含めて描くことこそが意図だったと語り、「この映画の中にもそれが出ていたので、私はとても満足です」と感想を述べました。
また、染谷将太演じる主人公・漆原のキャラクター造形についても話が及び、久坂部は「善意を持って行動する誠実な人物であるがゆえに、その選択が極端な方向へと進んでいく」と語りました。その複雑さが作品の核になってくるのだが、そうした難役を体現した主演の染谷将太については「イメージにピッタリ」と高く評価。善意と葛藤のあいだで揺れ動く繊細な人物像を、説得力をもって表現していたことに触れ、「まさに書きたかった人物像がそのまま描かれていた」と称賛しました。
医療現場の描写についても、久坂部は「100点満点」。それもそのはずで、専門家による監修に加え、実務経験を持つ俳優の起用など、細部までリアリティにこだわった制作体制を組んだと吉田監督は明かします。手術シーンの演出についても言及があり、現場の高揚感を表現する工夫を音楽面に施したと語りました。
イベントの最後には、改めてそれぞれが作品への思いを語ります。久坂部は「改めてこの作品を観て、本当に満足感でいっぱいです」と手応えをにじませ、「ぜひこの感想を周りの方にも伝えて、多くの人に作品を観ていただきたい」と呼びかけました。
続く吉田監督は、本作で描かれる介護や高齢化社会といったテーマに触れつつも、「問題意識を押し付けたいわけではない」と強調。「“面白い”という言葉が適切かは難しいが、まずは映画体験としてしっかり成立する作品にしたかった」と、あくまで“映画”としての手応えを大切にしたことを明かし、そのうえで「すぐに言葉にするのが難しい作品かもしれませんが、それでいいと思います。それぞれが感じたものを持ち帰ってもらえたら」と観客に委ねる姿勢を見せました。
画期的な老齢期医療の末路
ある町のデイケア「異人坂クリニック」に通うお年寄りの間で、漆原院長(染谷将太)が考案した“画期的な”治療が密かに広まっていました。究極のコスパの良い介護を目指すため、「廃用身」(麻痺などにより、回復見込みがない手足のこと)の切断を行った結果、「身体も心も軽くなった」「厳しい性格が柔らかくなった」などと予想外の“好ましい副作用”が現れたというのです。
噂を聞きつけた編集者・矢倉は、老齢期医療に革命を起こす可能性を感じ取り、漆原に本の出版を持ちかけます。しかしやがて、デイケアに関するとある内部告発が週刊誌に流出。さらに、患者宅で起きた衝撃の事件をきっかけに、すべてが暗転していきます…。
『廃用身』は、5月15日(金)より TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開。
[作品情報]
『廃用身』
原作:久坂部羊『廃用身』(幻冬舎文庫)
監督・脚本:𠮷田光希
出演:染谷将太 / 北村有起哉 瀧内公美 / 廣末哲万 中村映里子 中井友望 吉岡睦雄 / 六平直政 音楽:世武裕子
配給:アークエンタテインメント
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