土屋太鳳、「無言が一番難しい。でもいちばん自由」──『アクターズ・ショート・フィルム3 』完成報告会

5人の人気俳優、高良健吾、玉木宏、土屋太鳳、中川大志、野村萬斎がショートフィルムの監督に挑戦する『アクターズ・ショート・フィルム3』。2月11日(土・祝)の放送配信を前に、完成報告会が東京・丸の内の東京国際フォーラムで開催されました。

司会の案内に続いて、高良、玉木、土屋、中川、野村の五十音順で登壇。挨拶の後、司会の質問に答える形で各監督が発言しました。

高良健吾監督『CRANK-クランク- 』

高良監督は、俳優と監督の違いについての本質的な議論を展開。

 

「俳優は役という他人を表現するが、監督は自分を表現する。そのいみで、OKを出すのは常に自分。自分の中からしか何も出てこないので、何が正しかったのかわからないけれど、自分自身にOKを出すことはできたのは良い経験だった」

 

ふつうカットしてしまう移動シーンを中心に、自転車で書類などを届けるメッセンジャーの人間性に迫るのが本作品の特徴。だからこそ障害となったのが、道路交通法。早朝に撮影するなど、撮影に苦労した様子でした。

玉木宏監督『COUNT 100』

玉木監督は、「全員が同じ条件ということで、“よーいドン”で競争している感覚が心地よかった」と、この企画について語ります。

 

ボクサーをモチーフにした根拠については、「何パターンか構想はありましたが、ボクサーとしての自身の経験から、“這い上がれない人生”のような“凝縮された時間”が表現できるテーマだと思った」と狙いを明かします。

 

また、主演に林遣都を起用したことについては、「大島優子ちゃんと話をする機会があって、『いまでもボクシング続けてるよ』と聞いたんです。端正でロボットっぽさもある顔というのもイメージと合っている」と理由を語りました。

土屋太鳳監督『Prelude~プレリュード~ 』

土屋は、「現場に入ってからの苦労はなかった」と、まずはスタッフワークに感謝。ただ、自身の脚本が25分という尺に収まるかに悩んだ様子。

 

それでも「監督なんてできる機会は、一生に一度。だからこそ、女優として生きてきた意味を表現したかった」と企画に臨んだと言います。

 

「監督さんは、身近なようで対岸にいるような対極の存在でした。私たちの世代は、“自然な演技”を要求されることが多いのですが、今回は、演技でないリアルな自然体を探ってみました。そのための演出として、有村架純ちゃんとは、セリフの速度を速くしたい、ドキュメンタリーとして撮りたい、と申し合わせました」

 

演技についても「無言が一番難しい。でもいちばん自由な気がします」「相手の変化を気づけることって、とても素敵なことですよね」と、大切にした視点をことばの節々に見せていました。

 

有村との共演については、「ようやく夢が叶ったという感じ。むかしずっと忙しくて1〜3時間しか寝ていなかった頃、励ましのメッセージと共に連絡先をメイクさん経由で教えてくれたんです」と、馴れ初めを明かしました。

中川大志監督『いつまで』

一眼レフカメラとPCで映像を編集した経験もあるという中川は、子どもの頃から映画好きで、本編以上にむしろメイキングに注目するほど、「どうやって作っているのか」に関心が高かったそうで、次のようにコメントしています。

 

「小学生のときから俳優をやるなかで、この機械はどう使うのかなど興味があった。今回大きなバックアップのもと、映画作りを十分に楽しめた。後悔はないです」

野村萬斎『虎の洞窟』

開口一番、この4人の俳優を監督したような気持ちだと笑いを誘った野村は、「やっぱり映画って楽しいですねえ」とどこかで聞いたような一言からスタート。これまでも舞台での演出経験はある野村ですが、「映像の監督はいつかやってみたかった」と明かします。

 

自身の経験値を生かして、世界的に知名度が高い「ハムレット」と「山月記」をモチーフにクォリティを底上げを図ったとのことで、映画コメンテーターのLiLiCoをして「これぞ、日本のショートフィルムだ」と驚嘆させました。

 

虎になってしまう人、という主人公に窪田正孝を起用したことについては、「身体的に虎になることができる役者さん。見るからに強そうな人じゃない、というのもいい」と狙いを明かし、「三船敏郎を得た黒澤明の気分でしたよ」と窪田にぞっこんの様子でした。

「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」グランプリを目指す、同条件の予算&撮影日数で争う

トークセッションのなかで5人が異口同音に難しさを言及したのが、25分という尺と、撮影時間2日という制約。

 

中川が「性格的に全部を自分で確認したいが、時間がない」と漏らせば、野村も「舞台は生きものだが、映画は編集できる。でも今回は撮り直しができないから、編集で直さなければいけない。CG券が2枚あるんですが、それをどう使うかで悩んで…」と会場を沸かせます。もちろん、映画は大ウソをリアルに見せる総合芸術ですが、野村もスタッフワークに感謝しつつ「もっとやりたーい」と叫んでいました。

 

また、俳優から監督にまわったことで、はじめて経験できたことも多かった様子。

中川が、「ぼくと同世代の若手のなかで誰を起用するかを決める『キャスティング会議』があったのですが、プロデューサーたちの発言が自分にグサグサ刺さって。ああ、自分もこうやって名前が挙がって、消えていってるんだなと、ザワザワしました」と言えば、玉木が「なかなか経験できないよね」と苦笑、会場の笑いを誘っていました。

『アクターズ・ショート・フィルム』とは?

映画史上BESTにもあげられる『市民ケーン』は、俳優オーソン・ウェルズが25歳のときに監督・出演した作品です。以来、北野武、クリント・イーストウッドにいたるまで、俳優が名監督となる例は多く、日本でも若手俳優らが監督に挑戦し、成果をあげはじめています。監督の意図を最もよく理解し表現できる俳優は、監督としての才能をも埋蔵した存在なのです。

 

〝映画のWOWOW〟が開局30周年を記念し俳優たちと立ち上げたショート・フィルム・プロジェクト。目指すは「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」のグランプリ受賞、そしてその先へ...。

 

ルールは、1.尺は25分以内 2.予算は全作共通 3.原作物はなし 4.監督本人が出演すること。

 

 『アクターズ・ショート・フィルム3』は、WOWOWオンデマンドで、2月11日20時よりWOWOWプライムで放送、WOWOWオンデマンドで配信されます。

 

(取材・会見写真・文:遠藤)

[番組概要]

監督: 高良健吾、玉木宏、土屋太鳳、中川大志、野村萬斎(※五十音順)

チーフプロデューサー:射場好昭/コンテンツ戦略:仁藤慶彦/プロデューサー:小室秀一、宮田幸太郎、和田圭介 

制作プロダクション:スタジオブルー 

製作著作:WOWOW

番組公式サイト : https://www.wowow.co.jp/movie/asf/ 

番組公式Twitter : https://twitter.com/asf_wowow 

番組公式インスタグラム:https://www.instagram.com/asf_wowow/